埋葬されずさまよう遺骨が増えているという。経済的理由か、家族関係の事情からか、あるいはもっと深いところで死に対する考え方に変化が起きているのか。代わってさまざまな埋葬サービスが登場している。「預(よ)骨」「迎(げい)骨」「送骨」と呼ばれている。業界ではそうした埋葬を「ゼロ葬」と呼ぶそうだ。弔ってもらえる身内ゼロと死によってゼロに戻ることを掛けたのだろうか。
葬儀社が「預骨」「迎骨」「送骨」
預骨は葬儀社が墓のできるまで一時的に預かるサービスで、本来の意味ならなら奇異な感じはない。ところが、預けたまま遺族と連絡が取れなくなるケースが増えている。預骨サービスを行っている埼玉県内の葬儀社には、3万円で預けられる手軽さから月に3~4件、多い時で10件~20件の依頼があるという。5年前に比べ5倍ほどに増え、現在2500人分の遺骨が預けられている。
預けたまま9年間も音信不通になっている男性の遺骨について、担当者が預け主の自宅を訪ねると、男性の妻から返ってきたのは「捨てちゃっていいですよ。骨なんてほっぽり出して構わないんで」
事情を聞くと、20年間の別居生活だったある日、警察から孤独死したと連絡があり、遺骨の引き取りを求められた。別居した時に借金を押し付けられ迷惑をかけられた苦い思い出があり、遺骨を弔う気にならなかったと話す。結局、葬儀社が引き取り手のない遺骨を納める合同墓に埋葬したが、同じような遺骨41体も同時に埋葬された。
迎骨は家まで遺骨を引き取りに来てくれるサービスである。昨年(2015年)9月、夫を亡くした76歳の女性は足腰が悪く、ようやく今年7月に迎骨サービスで夫の遺骨を合同墓に埋葬できた。夫婦が結婚したのは12年前で、夫は66歳、妻は63歳のシニア婚だった。実家の墓はお互い別々だし、年金生活で新たにお墓を作るお金もない。「お骨があるばっかりに責められている気がして、ストレスがすごかった」
やっと知ったのが、3万円と交通費を払えば合同墓に埋葬してくれるNPO法人の迎骨サービスだった。このNPO法人には問い合わせが年間1000件もある。
送骨は宅配便で家から送り出し合同墓に埋葬してもらうサービスだ。14年前に夫と離婚し、娘と2人暮らしの主婦のところへ自治体から亡くなった元夫の遺骨を引き取ってほしいと連絡があった。生活保護で暮らし、62歳で亡くなった元夫には遺骨の引き取り手はなく、自治体が連絡の取れたのが元妻である主婦だった。14年ぶりに家族の元に戻った元夫の遺骨は10か月間自宅で過ごした後、7月下旬に送骨サービスで送り出した。宅配便が引き取りに来た日、主婦と娘はお骨に手を合わせ「安らかに眠ってください」と別れをした。