東京・豊洲の新市場で盛り土を省く工法に変更したのは、いつ、誰なのか。「モーニングショー」は工法を決めた技術会議の議事録をチェックしたが、肝心のことは書いてなかった。技術会議のメンバーは7人で、2014年11月までに18回開かれたが非公開だった。この間に専門家会議の「盛り土提言」は無視され、地下空間が勝手に作られたわけだ。
きのう13日(2016年9月)に開かれた東京卸売市場審議会で、岸本市場長は「建物下の盛り土がなされておらず、これまでの都の説明と事実が異なっておりました」と、まるで他人事のような口ぶりだった。
地下利用不採用になったのに工事進行
技術会議の議事録は約300ページ。初めて地下空間に言及があったのは第6回(08年11月)で、公募案なのか都の提案なのかは不明だが、「地下空間を利用できないか」と記録されている。第8回では、高さが2.5メートルしかとれないためトラックの駐車場は無理だが、通勤駐車場とターレ置き場に―と報告がある。
浜田敬子(「アエラ」前編集長)「もともと盛り土でしょ、という意見は出なかったのか」
司会の羽鳥慎一「出たそうです」
ところが、図面には「地下駐車場」となっていて、車の絵まで描いてあった。建築エコノミストの森山高至さんは「もしかして、(技術会議を)誘導していたのかも」という。
第9回の会合で、地下空間の活用は「工期、経費の問題があるので不採用にしないか」という意見が委員からあり、「不採用」となった。
玉川徹(テレビ朝日ディレクター)「そこは埋めるところだから、でなければおかしいですよ」
森山「間違った質問に間違った答えを出して、さらに間違った解答している」
玉川「なぜか地下空間の方へリードしている」
そして、最後の第18回の会議で「地下水管理システム」の図が出た。地下の浄化装置やパイプの配管と上の建物の図だが、なぜか建物の地下部分は灰色に塗られているだけで、説明書きもない。
森山「保留しておきたかったのでしょう」
玉川「僕は浄化施設に引っかかりますね。浄化しないといけないのは、下の土壌が汚染されているからだなと」
盛り土予算どこに消えたのか?
浜田「800億円使って盛り土してるが、してない部分のお金はどこへ行ったんでしょう」
羽鳥「不採用になったものがなぜ採用になったか、議事録ではわからなかったので、都に聞いてみました」
すると、「万が一、汚染物質が検出された際の作業空間を確保したほうがいいと、技術会議が独自提案した」という回答だったという。では、誰が提案したのか。そこで委員に聞いた。答えはこうだ。
川田誠一・産業技術大学院大学教授は「知らない」
小橋秀俊・土木研究所主席研究員「わからない」
長谷川猛・都環境科学研究所所長「話自体がなかった」
座長の原島文雄・首都大学東京学長は連絡がつかず。
玉川「話は出てない、が正しいのかもしれない。提案自体がウソかも」
森山「ミステリーですよね。技術会議のせいにしようとしているのか」
羽鳥「8年前とはいえ、こんな大事なことを『知らない』とはねえ」
浜田「話が出たらもめたと思います。そしたら記憶には残る」
東京都にも聞いたが、答えは「確認中」だった。当時知事だった石原慎太郎氏がきのうのテレビ番組で「だまされた」と言っている。
玉川「だまされたということは、知らなかったのとは違う。別の説明を受けていたということですかね」
併設の観光施設「千客万来」では盛り土掘り返し
豊洲ではこれらの施設とは別に、観光施設「千客万来」の整備計画がある。ここは盛り土されたところだが、施設の下を掘って、地下駐車場にする計画だという。汚染を防ぐために入れた盛り土を掘りかえすわけだ。
市場の空洞といい、新たな駐車場といい、要するに都の担当者の頭には、地面のすぐ下に恐ろしい汚染物質が眠っているという意識はほとんどないのだろう。