11日(2016年9月)にニューヨークの「グランド・ゼロ」で行われた9・11同時多発テロ追悼式典に参加していた米大統領選ヒラリー・クリントン候補(68)が、体調不良を訴え途中で退席し、車に乗り込もうとしたときに膝が崩れしゃがみ込む姿が伝わった。
大統領選まであと2か月。かねてから健康問題が指摘されていたが、これはチャンスとばかり、ドナルド・トランプ候補(70)はさっそく健康不安をあおり始めた。
これまでにも咳が止まらなくなったり激しい腹痛
クリントンの主治医によると、彼女は先週9日に肺炎と診断されたが、体調不良をおして式典に参加しため、暑さで脱水症状を起こしたらしい。2時間余りの休憩をとって報道陣の前に姿を現したクリントンは、「気分はどうですか」と聞かれ、「最高よ、きょうは素晴らしい日だわ」と健康をアピールしていた。しかし、街の声は「それほど暑くなかった。健康問題を隠しているのだと思う」と見る。
クリントンはこれまでにも腹痛による脱水症状で失神したり、頭部に血栓が見つかっている。今年5月には選挙講演中に咳が止まらなかった。この時は「トランプ氏のことを考えるといつもアレルギーが出るの」とジョークでごまかした。
米大統領選の新たな争点
健康問題は大統領選を大きく左右する。2008年にオバマとマケインが争った時は、皮膚がんを患った病歴があるマケインをオバマ陣営が攻撃した。マケインは1100枚に上る診断書を専門医に見せて転移のないことを証明した。
ロバート・キャンベル(東京大教授)「クリントンさんはよろけて倒れそうになったこと以上に、彼女が健康上の問題を公開しないことが大きいんです。9日に肺炎と分かっていても言わなかった。攻撃されることを怖がるあまり、情報を抱え込む。メール問題にもつながる彼女の資質ではないかとマイナスになっています」
支持率はクリントン45.9%、トランプ42.9%と3ポイント差まで縮まっている。ニューヨーク・タイムズの勝利確率ではクリントンが79%となっている。
最大のアマ場であるテレビ討論会が9月26日、10月9日、同19日の3回行われるが、キャンベル教授は「討論会の過程でどちらかが逆転したり、踏み外す瞬間が必ず訪れる」と見る。