「竹内小夜子、60歳の熟年女性です。好きなことは読書と夜空を見上げること」
はにかみながら語り始め、小首を傾げながら、節目がちに斜めに視線を落とす。そしてキメの一言。「私、尽くすタイプやと思います」
大竹しのぶ演じる小夜子は、高齢独身男性の後妻におさまり、根こそぎ財産を奪い取る後妻業のプロだ。夫を失うこと7回、そして8人目の夫を葬ろうと企てるところから物語は始まる。
ときにしおらしく、ときに大胆に、そしておもいっきりはすっぱに振舞う小夜子に、老人はイチコロだ。百発百中のプロの仕事には、小夜子の共犯者にして結婚相談所所長の柏木(豊川悦司)も、化け物と賞賛する。
ところが、8人目の夫・中瀬はなかなかしぶとかった。脳梗塞を薬で誘発させても一命をとりとめ、ようやく亡くなったと思えば、小夜子を目の敵にしていた中瀬の娘(尾野真千子)が小夜子の身辺を徹底的に洗い始める。
「爺さんのものはみーんな、私のもんや」
大竹しのぶのふてぶてしさ、そして肝の座り具合といったら!「爺さんのものはみーんな、私のもんや」と言い切り、煙草をスパスパ。小さな体で、中瀬の娘の髪をひっつかんでの取っ組み合いに、馬鹿息子(風間俊介)とも尻を蹴り飛ばす大立ち回りを演じる。 ミステリアスな美人ではなく、どこまでも即物的で好色な金の亡者。ギラギラと発散されるエネルギーの大きさには、毒婦という言葉がよく似合う。それなのに、本当に好きな人には好かれない、と柏木を想って呟く姿は、可憐で哀しい。
嫌が応にも思い出されるのは数年前の事件である。あのときの報道を、もう1度読み直したら今度はどんな風に再生されるだろう。フィクションだからこそ、小夜子の「憎めない」側面が際立ったのか。それとも・・・。女の陰と陽はうらおもて。くわばらくわばら。
ばんぶぅ
オススメ度☆☆☆