認定患者に他する偏見と嫌がらせ「さっさと逝っちねくらいの調子だった」
こうしたなか、患者や家族はさらに追い込まれていった。水俣病の第1号認定患者の姉である下田綾子さんは、患者がチッソの経営に負担をかけていると周囲の目が一層冷ややかになっていった話す。「そのころはチッソの味方が多かっただな。『(補償金)もらえれば、分限者(金持ち)になってよかった』とか、『いろんな物が買えてよかった』とか。いろいろあった。口に言われんほどあった」
妹を看護し続けた下田さん自身も、長年、手足のしびれやけいれんに悩まされ、身体が動きづらくなっていったという。若いころは差別をおそれて認定申請しなかったが、新基準後に申請した。しかし、認められなかった。
「(今回の資料などで、国や企業の思惑や動きを知って)たまげて、あいた口がふさがらん。国はもう、こういう人おるなら、さっさと逝っちねくらいの調子だ。煩悩(思いやり)のなかばい。人間的でなか」(下田さん)
*NHKクローズアップ現代+(2016年8月23日放送「『加害企業』救済の裏で~水俣病60年『極秘メモ』が語る真相~」)