「あさチャン!」が始まった5時半過ぎ、国山ハセンアナが悲痛な声を上げた。「さきほど、吉田沙保里選手の決勝の試合が終わりまして、銀メダル獲得となりました。残念ながら4連覇とはなりませんでした。しかし、見事な銀メダル獲得となりました」
リオ五輪女子レスリング53キロ級の吉田は決勝まで圧倒的な強さで勝ち進んできた。難なく進んできた。決勝の相手はアメリカのヘレン・マルーリス選手で、第1ピリオドは1ポイントリードしたが、第2ピリオドで4ポイントを失い、そのまま逆転負けしてしまったのだ。
父親・栄勝さんいない初めてのオリンピック
司会の夏目三久「吉田選手、本当にお疲れ様でした。三連覇でも大偉業ですよ。これまでいろんなプレシャーがあったと思うんですよね。吉田選手も試合を重ねて『絶対女王』と言われれば言われるほど、怖さを知ったと仰ってんですよね」
表彰式で吉田は顔をクシャクシャにして泣きっぱなしだ。吉田は3歳の頃から父親・栄勝さんの指導でレスリングを始めメキメキと頭角を表した。その父は2年前に亡くなり、吉田が一人で五輪に臨むのは今回が初めてだった。母親から「よく頑張ったよ」と慰められても、ワンワン泣くばかり。
「父がいないオリンピックは初めてだったんですけど、『助けてくれるかな』とどこかで思ったのが間違いかなって。お父さんに叱られちゃう。だけど、最後の最後まで応援してくれていたと思うので、そこは信じて戦うことができました」
文 ビレッジマン/似顔絵 池田マコト