リオデジャネイロ五輪で10日(2016年8月)未明、カヌースラローム・カナディアンシングルで、日本の羽根田卓也選手が銅メダルを獲得した。この種目での五輪のメダルは日本初だ。
羽根田は準決勝を6位で通過し、決勝は10人の争いとなり3位に入った。その瞬間、涙があふれ、その肩を漕ぎ寄せた選手が抱いた。羽根田は「この銅メダルって、われわれにとって夢というか、日本人がこの競技でメダルを取るということは、自分で言うのもアレですけど、本当にすごいことだと思うんです」と語った。
たしかに、1位はフランス、2位はスロバキアの選手で、他も欧米の選手ばかり。その厚い壁を日本人が突き抜けたのだ。「18歳からこの日を夢見てきましたので、泣けちゃいました」
父や兄の競技見て「自分もやりたい」10年間スロバキアで修行
司会の羽鳥慎一は「カヌー、カナディアンてよく分からないですが」という。たしかに馴染みがない。カヌー人口は日本でも増えてはいるものの、沿岸部や都会の水路をのんびりと巡るのが主流だ。
このスラロームは全然違う。全長250メートルの急流を下るタイムトライアルで、途中に設けられた最多で25のゲートを通り抜ける。いくつかは流れに逆らって通過する。不通過は50秒のペナルティー、ゲートに触れると2秒が加算される。
愛知・豊田の出身だ。父と兄もカヌーをしていた影響で始めたのが9歳のときだった。高校3年の頃はもう国内に敵なし。卒業後、スロバキアに渡って10年間も修行してきたのだった。オリンピックは08年の北京が初。この時は予選落ちだったが、12年のロンドンでは7位入賞を果たした。