リオ五輪の陸上競技でウサイン・ボルト選手は前人未踏の2種目3連覇に挑む。8年前に21歳で出場した北京オリンピックでは100メートルを9秒69の世界新記録で優勝。200メートルでも世界記録を更新した。4年後のロンドンオリンピックで2連覇を達成した。
29歳のボルトは今回のリオが年齢的に最後のオリンピックになると公言し、競技生活の集大成として、伝説を超えた「不滅の存在」になりたいと話している。
隠せぬ筋力の衰え・・・心配される持病「脊柱側湾症」の悪化
さすがに3連覇への道は平坦ではない。16年までの4年間で、100メートル9秒8を切ったのは2回しかなく、09年にベルリン世界選手権で出した自己記録を更新できていない。今シーズンの最高記録は9秒88で、世界ランク4位だ。ライバルのガトリン選手は先月(2016年7月)、9秒80をマークしている。
100メートルの元日本代表の朝原宣治さんは、ボルトのパワーが衰えてきているのではないかと指摘する。「ベルリン(2009年)のときは、(エネルギーが)満ちあふれていましたが、徐々に減ってきている印象です」
ボルト背骨が湾曲する脊柱側湾症という持病を抱えており、筋肉への負担が通常の選手より大きいという。年齢を重ねて筋力が衰えると、「脊柱側湾症による問題が悪化する可能性がある」(ケルン体育大学のノベルト・シュタイン教授)と言われている。
先月1日には左太ももの裏側に軽い肉離れを起こし、レースを棄権した。一時はオリンピック出場も危ぶまれたが、治療に専念して2週間後に練習を再開した。
先月末のレースでは往年の走り復活
ボルトは若いころは練習嫌いで知られたが、苦手だったという長距離の走り込みや体幹トレーニングも積極的に取り入れているという。「その道を極めたいなら、多くのことを犠牲にしなければならない。僕は体を休めるため、なるべく外出を控えている。友だちを遅くまで遊びたいのを我慢して、早く寝る。ファーストフードも控えている。世界一になるためには当然です」(ボルト)
先月22日にはケガから復帰後の初のレースに望んだ。その200メートル走の後半、ボルトは持ち前の加速で抜け出し、各国の強豪選手を抑えて1位になった。本番にピークを持ってくるのがうまいとされるボルトが、五輪に向けて手応えをつかんだようだ。
*NHKクローズアップ現代(2016年8月2日放送「リオ五輪『最強伝説』への道 陸上 ウサイン・ボルト 前人未到の地へ」)