北海道警銃器対策課の元刑事・稲葉圭昭が書いた「北海道警・悪徳刑事の告白・恥さらし」が原作だ。大学柔道部での活躍を買われて諸星要一(綾野剛)は北海道警察の刑事になる。最初はたいした仕事もできなかったが、裏社会との接触を図り、S(スパイ)を作り、内通を得て暴力団員を覚醒剤・拳銃所持で次々と逮捕して本部長賞を受ける。
諸星は暴力犯係に移動するとさらにSを増やして摘発数を増やしていく。道警本部に銃器対策課が新設され、ここでも諸星は点数を稼ぐようになる。しかし、それは「偽装」を含めた違法な捜査によるものだった。そして、税関、警察を巻き込んだ「日本警察史上最大の不祥事」に発展していくのだ。
半端じゃないリアリティー!「TKO」木下隆行のヤクザのボス怖いぞう
役者たちのリアリティが半端じゃない。諸星に「刑事に一番重要なのは点数だ。そのためにはヤクザのなかにSを作れ」とレクチャーする上司の村井(ピエール瀧)。諸星のSになるヤクザの幹部・黒岩(中村獅童)は「本心を隠すために」常にサングラスをかけている。黒岩は警察の「囮捜査」にも協力する。運び屋・山辺(YOUNG DAIS)は諸星を「オヤジ」と慕い、彼の手足になる。
諸星の愛人になるクラブのホステス(矢吹春奈)は背中に刺青を入れていて、やがてシャブに溺れていく。盗難車バイヤー・アグラム(デニス・植野行雄)は怪しいパキスタン人。諸星に接近する色っぽい婦警(瀧内公美)は、諸星が落ちぶれるとあっさり捨てる。なかでも特筆すべきは、ワンシーン出演ながら強烈な印象を残す関東ヤクザのボスを演じるお笑いコンビ「TKO」の木下隆行の圧倒的な存在感だ。まるで「悪の権化」といったところである。
捕まったのは悪徳刑事1人だけ!一番悪い奴は誰なのか
北海道警察最大の不祥事だったが、逮捕されたのは諸星ひとりで、あとはまったくお咎めなしであった。哀れを誘うのはラストで、逮捕された諸星が留置場で「できるだけ早く職務に復帰したいです」と警察に忠誠を誓うシーンだ。「本当に日本で一番悪い奴らは誰なのか」と、この映画はと問いかけてくる。
佐竹大心
オススメ度☆☆☆