進化を続ける人工知能が人間にしかできないと思われた絵画や小説、音楽などの芸術の世界にも進出しはじめている。今年4月(2016年)、17世紀の絵画の巨匠、レンブラントの筆使いを完璧にマスターした人工知能がホンモノと見紛う作品を生み出したという。3月には人工知能が書いた小説が、文学賞「星新一賞」の1次選考を突破した。
星新一の作品1000編以上を覚え込ませて文章力習得
小説を執筆した人工知能は、公立はこだて未来大学が中心となったプロジェクトが開発した。リーダーの松原仁教授は「作家になろうと思って小説を書いても作家になれない人が多いので、小説を書くのはむずかしいんです。(それができれば)人工知能にとって大きなブレイクスルーになるのではないかと思っています」
まず、星新一さんの作品1000編以上を人工知能に覚えこませ、3年がかりで星さんらしい文章を書かせることに成功した。人間が「いつ」「どこで」「誰が」など60ほどの設定を与えれば、それらしい文章を作り出すという。しかし、現状では人間の手助けが必要だ。「いまは(役割が)人間8割、人工知能2割だと言っていますが、それが一瞬のうちにひっくり返って、人工知能8割、人間2割になる可能性はあると言えばあります」(松原教授)
売れるものは作れるが芸術としていいものを作れるかどうか
ゲストのメディア企業会長の川上量生氏はこう話す。「売れるものを作るということでは、人工知能はたぶん最終的に人間に勝るのではないでしょうか。なぜなら、いろんな人がいろんな作品にどのように反応したかというビッグデータをこれから解析できるようになるからです。そうすると、どういう特徴を持った作品が一番受けがいいのかはデータから取れてしまう」
タレント・美術評論家の山田五郎「チェスの試合なら勝った負けたがありますが、芸術の分野でどっちが優れているのかというのは何とも言えないですよね。人工知能が作った作品の方がいいと思う人が出てくるのはありえることですが、だからといって人工知能が人間を超えたとも思わない。商業的な成功だけではないのが、芸術とか創作という分野ですから」