天皇陛下が皇太子殿下に皇位を譲る「生前退位」の意向であることが明らかになった。陛下は現在82歳。健康上に大きな問題はないが、公務の負担は大きく、政府・宮内庁は意向に沿うべく検討を始めた。皇室典範には「生前退位」の規定はなく、皇室典範改正や特別立法が必要となる。
陛下は昨年12月(2015年)の誕生日の会見で、「年齢というものを感じることも多くなり、行事の時に間違えることもありました。少しでもそのようなことのないようにしていくつもりです」と話した。
自分の即位55歳。皇太子いま56歳
陛下の公務は憲法に定められた国事行為や外国要人との面会など数多い。昨年1年間の国務大臣の任命式や表彰などは250回以上、海外や地方訪問は75回を数える。この5月の熊本の地震災害では、皇后陛下と南阿蘇村を訪れ被災者を見舞った。
こうした公務の軽減については、10年ほど前から議論されてきた。2012年に心臓バイパス手術を受けたときに、皇太子殿下が「陛下のご年齢を考えますと、ご負担の軽減は必要。周りがいろいろと考え、お助けしていくことが大切」とコメントしたこともあった。
「生前退位」の情報はNHKが伝えた。宮内庁幹部は「そのようなことは一切ない」と否定したが、別の関係者によると、陛下は以前からそうした意向を周囲に漏らしていたという。
司会の夏目三久「いまなぜ生前退位のご意向が話題になっているのですか」
静岡福祉大の小田部勇次教授は「以前からご体調が良くないと言われている」という。03年に前立腺がんの手術を受け、08年に骨粗しょう症の診断、09年に胃や十二指腸に炎症、11年にマイコプラズマ肺炎、12年に心臓冠動脈のバイパス手術、今年はじめにはインフルエンザにもかかった。
小田部教授は「女性宮家の問題などで皇室典範の改正が検討されている機会に譲位も考えてみてはという問いかけと受け止めている」という。公務について陛下はあくまで「自分でこなす」という考えで、健康が許さなければ譲位する方がいいということのようだという。
潟永秀一郎(「サンデー毎日」編集長「宮中祭祀だけでも年に20回くらいあって、本当に大変だと皇族の方から聞いたことがあります。皇太子もいま56歳。ご自身が即位されたのが55歳ですから、このあたりも考えていらっしゃるのではないでしょうか」
天皇125代の半数が生前退位
89年1月の即位の際には、「憲法に定められた天皇のあり方を念頭に置き、勤めを果たしたい。古来の天皇に思いをいたすとともに、現代にふさわしい皇室のあり方を求めていきたい」と語っていた。即位20年の時には、「皇位継承の制度については国会の論議に委ねるべきと思いますが、将来の皇室のあり方については、皇太子とそれを支える秋篠宮の考えが尊重されることが重要だと思います。2人は長年私を支えてくれました。天皇のあり方についても、十分考えを深めていると期待しています」と述べている。
天皇家125代の歴史で生前退位は珍しいことではなく、約半数が譲位している。ただ、現行の皇室典範では「天皇が崩じた時は、皇嗣(皇太子)が直ちに即位」となっているだけで、「生前退位」の規定はない。法的な措置が必要ということだ。新聞報道は「数年のうちに」と伝えているが、小田部教授は「そんなに時間はかからないだろう」という。
災害地訪問などで、皇后さまに支えられるように歩く天皇陛下の映像が繰り返し流れた。一般にも、80歳を過ぎた人が同じ仕事を続けている例はそうそうあるまい。1日も早くご意向に沿うよう、ことを進めてほしいものだ。