今、団地が何かと話題になっている。高度成長期、庶民の憧れだった団地も、いまや高齢化を迎え、孤独死が頻発している。時代から取り残された「昭和な空間」だ。今年だけでも団地を舞台にした映画「桜の樹の下」「海よりもまだ深く」が公開されている。
藤山直美、岸辺一徳、石橋蓮司らベテランがシュールなギャグ応酬
舞台は大阪郊外の古ぼけた団地である。息子を事故で亡くした山下ヒナ子(藤山直美)と清治(岸辺一徳)の夫妻は漢方薬局を畳んで団地に引っ越してきた。ヒナ子はスーパーのレジのパートに通い、清治は裏の林へ植物図鑑を手に散歩に出かける。店長からバーコードの読み取り方を注意されたヒナ子は、着ていた縦縞のシャツをバーコードに見立てて「ピッ」と声を出して一人で練習する。このシーンは藤山直美のアドリブだったそうだ。
自治会長の行徳正三(石橋蓮司)と妻の君子(大楠道代)は山下夫妻を何かと気にかけてくれる。君子は団地の奥様連中のリーダー的存在だった。「東京人って、私は火星人でもいいです」といったシュールなギャグの応酬が全編を通して連発される。「団地っておもろいなあ、噂のコインロッカーや」ヒナ子が呟く。
あっと驚く衝撃ラスト!ありそうもないことが起きるのが団地
団地の自治会長選挙に立候補した清治は正三に負ける。君子から「思ったより人望なかったんやね、清治さん」と言われていじけ、「僕は死んだことにしてくれ」と床下に閉じこもってしまう。
それから2か月。清治を見かけなくなった団地の住人たちが噂話をする。ある主婦が「山下さん、殺されてると思う」と口走ったことをキッカケに団地中が大騒ぎ。マスコミの取材クルーまで押しかけ、「ご主人が生きているという証拠を出しなさい」と正三がヒナ子に詰め寄る。「ほな、電話します」とヒナ子はケイタイでやりとりするふり。
そして、ラストの衝撃的なSF的展開。こんなのありかと唖然とするが、「ありそうもないことがありえるというのが団地でしょ」と君子はいう。まさにありそうもないことが起こったのだ。そういえば、団地につきものの給水塔って、SFっぽい。
佐竹大心
オススメ度 ☆☆☆