今、団地が何かと話題になっている。高度成長期、庶民の憧れだった団地も、いまや高齢化を迎え、孤独死が頻発している。時代から取り残された「昭和な空間」だ。今年だけでも団地を舞台にした映画「桜の樹の下」「海よりもまだ深く」が公開されている。
藤山直美、岸辺一徳、石橋蓮司らベテランがシュールなギャグ応酬
舞台は大阪郊外の古ぼけた団地である。息子を事故で亡くした山下ヒナ子(藤山直美)と清治(岸辺一徳)の夫妻は漢方薬局を畳んで団地に引っ越してきた。ヒナ子はスーパーのレジのパートに通い、清治は裏の林へ植物図鑑を手に散歩に出かける。店長からバーコードの読み取り方を注意されたヒナ子は、着ていた縦縞のシャツをバーコードに見立てて「ピッ」と声を出して一人で練習する。このシーンは藤山直美のアドリブだったそうだ。
自治会長の行徳正三(石橋蓮司)と妻の君子(大楠道代)は山下夫妻を何かと気にかけてくれる。君子は団地の奥様連中のリーダー的存在だった。「東京人って、私は火星人でもいいです」といったシュールなギャグの応酬が全編を通して連発される。「団地っておもろいなあ、噂のコインロッカーや」ヒナ子が呟く。