1週間近く山中にいて助かった田野岡大和君(7)のニュースは海外でも話題で、30か国で報じられたという。大和君はどうやって自衛隊施設にたどり着いたのか。
河村忠徳ディレクターが夕暮れ間近の北海道七飯町の山中から約10キロ離れた演習場まで歩き、夜は10度以下に下がる施設を体験した。わかったのはいくつもの偶然や幸運が重なっていたことだった。
たまたま自衛隊施設につながっていた分かれ道
置き去りにされたところから歩きはじめると、道はすぐ数方向に枝分かれした。さらに30分も歩くと、平坦だった道が登り坂に変わる。「この登りで体力が相当奪われたという感じがします」(河村ディレクター)
2時間半もするとあたりは真っ暗闇。「この真っ暗な道を一人で歩いていたかと思うと、すごいことだと感じます」。午後8時過ぎ、ようやく演習地の施設のかすかな明かりが見えた。施設の入り口には水道の蛇口があるが、普段は凍結防止のために元栓が閉められている。大和君は元栓の場所を知っていたのだろう。施設のカギが偶然開いていたのも幸いし、なかにはマットが重ねられてあったのも幸運だった。
大和君は2枚のマットの中に入って寝たというが、どれだけの保温効果があるのか。気温10度に設定した室内でペットボトル2本を用意し、体温と同じ36度のお湯を入れた1本をマットの間に、もう1本を外に放置して1時間後の温度を測った。マットの中のペットボトルは29度を維持し、命を支えるには十分の保温効果があったが、外に放置したペットボトルは21度に下がっていた。
雨宿りに自衛隊員が来なければ・・・
番組はほかにも、自衛隊員がたまたま雨宿りで施設に入って発見した、大和君に山道を歩く体力と暗闇に耐えられる精神力があったことなども大きいと指摘した。作家の山本一郎は「(広大な敷地を歩き回らずに)ここにいたというのが命をつないだ大きな理由なのかなと思いますね。自衛隊ドラフト1位みたいな感じですよね」
警察は置き去りにした父親に心理的虐待の疑いがあるとして児童相談所へ通告したが、司会の小倉智昭は「お父さんは社会的制裁を十分受けていますし、本当に辛い思いをしたと思う。あとはそっとしておいてあげてもいいんじゃないですか」という。