<素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店>
「あなたの生涯終らせます」死への旅立ち依頼した男の滑稽・・・最期覚悟した途端に生への執着

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(C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ
(C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ

   お金はあるけれど、やりたいこともやらなければいけないこともまるでない―。主人公・ヤコブは母を看取ったその足で、自分の生涯を閉じることにした。

   幼少期の出来事をきっかけに感情を失ったヤコブは、ひょんなことから「死への旅立ち」を商品とする旅行代理店の存在を知り、オフィスを訪れる。

   爆発、毒物、なんでもござれのコースの中から、ヤコブが選んだのは「サプライズ」。ある日突然、完璧に自然な形で事故が起きる。いつ、それがやってくるのかは、契約者にも知らされない。その日を待つ間に、ヤコブは同じく「サプライズ」の執行を待つ女性、アンネと出会う。同じ境遇の奇妙な連帯感から、2人は惹かれていく。

泣けて笑えてちょっぴり皮肉

   気難しいけれど、本当はチャーミングな壮年男性とお転婆娘のラブストーリー、では終われないのがこの映画の面白いところだ。自分が手配した殺し屋から逃げ惑うという滑稽さに加え、殺し屋兄弟を出し抜くヤコブのしぐさはどこかユーモラス。穏やかな表情と、どんくさいというべきか、鷹揚というべきか迷うゆったりした動きにクスリとさせられる。貴族の末裔というキャラクターにぴったりの好演だった。

   ストーリーのテンポの良さに、オランダ・ベルギーの石造りの街並み、よく手入れされた宮廷風のお屋敷、田舎の狩猟小屋・・・これぞヨーロッパという風景の中でスポーツカーをかっ飛ばすシーンの気持ちよさも相まって、あっという間の105分だ。

   ヒューマンドラマなのだけれど、細部はしっかりコメディ。「最期」という機会を通じて、生の喜びと、それを彩る「愛する人」について問いかける主題を、笑いが軽妙に包み込む。泣けて笑えて、ちょっと皮肉っぽいエンドには、作り込まれた物語を観たときのスッキリ感が残る。

   筋が読める部分はあるけれど、そこは「わかっていても、やっぱり良いよね」。明るくて、どこかノスタルジックで、奇妙にさみしい劇中歌も雰囲気にぴったり。余韻がぼうっと残ります。

ばんぶぅ

おススメ度 ☆☆☆☆

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