「自分を追い込まないとダメになっちゃう」蜷川幸雄葬儀で大竹しのぶ弔辞

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   演出家・蜷川幸雄さんの葬儀がきのう16日(2016年5月)、東京・青山葬儀所で行われ、俳優、演出家、ファンら1400人が参列した。教えを受けた5人の俳優が弔辞を述べ、それぞれに蜷川さんの情熱を語った。

平幹二朗「あなたは一度も演技を褒めてはくれませんでしたね」

   平幹二朗「あなたは一度も僕の演技を褒めてはくれませんでしたね。なんとか褒め言葉を引き出したくて、熱演に熱演を続けました。シャーロック・ホームズに死なれたワトソンのように途方に暮れてます」

   大竹しのぶ「ロンドンでおっしゃった。『ねえ、俺がさぁ、海外に出る理由わかる? いつも勝負していたいんだ。客観的なところに自分を置いて、追い込まないとさ、ダメになっちゃうだろ』」

   藤原竜也「ハムレットの稽古の録音テープを聴き返してみました。恐ろしいほどのダメ出しの数でした。『俺のダメ出しで、お前に伝えたいことはほぼ言った。今はすべてわかろうとしなくていい。いずれ理解できる時が来るから。アジアの小さな島国のちっちゃい俳優にはなるな。もっと苦しめ。泥水に顔を突っ込んでもがいて苦しんで、どうしようもなくなった時に手を上げろ。必ず俺が引っ張ってやるから』と」

俳優たちが見たがった蜷川の稽古

   スタジオにも接点があった。ウェンツ瑛士(タレント)は蜷川さんの舞台に立ったことがあった。「藤原さんが羨ましい。舞台の時はわからなかったけど、人生に火をつけてくれるという感覚がありました」と話す。

   司会の加藤浩次「どういうこと?」

   ウェンツ「役者かタレントかで迷っていた時期で、生きている情熱が薄かったなと思わせてくれるぐらい蜷川さんは激しく生きていました。その火を少しいただきました。可能性を信じてくれていたんです。できるか、じゃなくて、できると信じてくれていたんです」

   加藤「だから言葉をかけてくれる、怒ってくれるということなんだろうね」

   ウェンツ「他のそうそうたる役者さんが、稽古を見に来ますからね」

   加藤「見るだけに?」

   ウェンツ「今から思うと、その火をもらいに来るんじゃないかと」

   湯山玲子(著述家)「蜷川舞台の初体験は大学の時でした。彼が小劇場、アングラから商業演劇に出てきた時で、近松だったけど、本当に目の前に江戸の町を作り出していました。シェークスピアでもガルシア・マルケスでも、コアみたいなものを一瞬で視覚として分からせました」「オリンピックの演出を見たかった気がします」

   3年前、稽古を見せてもらって話を聞いたというロバート・キャンベル(東京大教授)は、「印象的だったのは俳優に絶対台本を変えさせない。マクベスはスコットランドの物語を安土桃山時代に置き換えているのですが、シェークスピアのエッセンスを分からせました」

   類まれな才能は逝った。

文   ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト
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