一瞬たりともスクリーンから目が離せないという映画はそうあるものではない。そんな貴重な体験をさせてくれる。原作は2012年の週刊文春「国内ミステリー部門」、13年の「このミステリーがすごい!」でともに1位になった横山秀夫の小説だ。小説は主人公・三上義信の「一人称」で進むが、映画は群像劇に仕上がっている。結末は原作と変えているそうだ。
時効成立直前に犯人捕まるのか
昭和64年1月5日、関東近県で少女が誘拐され、身代金は奪われ殺害された。通称「64(ロクヨン)」と呼ばれる事件で、その2日後に天皇が死去し、昭和の終焉とともに事件は忘れ去られていった。
それから14年後の平成14年2月、刑事として「64」に関わった三上(佐藤浩市)は県警本部の広報官となっていた。しかし、あるひき逃げ事件の加害者の「匿名報道」を巡り記者クラブと対立してしまう。
そんなとき、警察庁長官が公訴時効まで1年に迫った「64」の捜査員を激励するため、県警を視察に訪れることになった。記者クラブは「匿名報道」問題を理由に長官視察の取材をボイコットすると言いだす。三上は長官視察報道への協力を要請するが、記者たちはなかなか納得しない。広報官としてはピンチである。
前後編2部作も納得の盛りだくさん
三上は広報活動の一方で、「64」を独自に捜査していた。その過程で明らかになったのは、捜査ミスを県警が組織ぐるみで隠蔽工作していたという事実だった。その直後、「身代金は2000万円、犯人はサトウ、使用するのは丸越デパートの一番大きなスーツケース」という「64」とそっくりの誘拐事件が起こる。ここで前編終了。
三上は2つの「敵」と闘うことになる。1つは警察上層部の複雑な思惑。1つは記者クラブの警察への反発。そして、自らも「引きこもり」だった娘の「行方不明」という家庭問題を抱えていた。
最近、前編後編の2部作という公開がやたらと多いが、この作品については納得である。
佐竹大心
オススメ度☆☆