キャー、大野くん、チョーカッワイイ! って年甲斐もなくピョンピョンしてしまうくらい主演の大野智がいい。「カッコイイ」ではなくて「カッワイイ」です。念のため。
大野智扮する「鮫島ホテルズ」の社長・鮫島零治はとっても性格の悪い男だ。ささいなことで従業員をすぐクビにする一方、自分はわがまま放題。したがって社員には嫌われ、当然女性にモテるはずもない。ホテルチェーンの若き社長という好条件につられて見合い話もくるが、一度会っただけですべて先方から断られる始末である。
地顔そのまま大野くん「無愛想なふくれっ面」
いつも無愛想なふくれっつら。もっとも、大野くんは地顔がほっぺたのふくらんだ幼児顔だから、黙っているだけでふくれっつらになるのである。普通の大人だったら許せないその言動も、3歳児がそのまま大きくなったような顔かたちの大野くんだと、とたんに愛嬌になってしまうから不思議だ。
で、カワイイのは、その無愛想な大野くん、いや、鮫島が初めて新入社員・柴山美咲(波瑠)に恋をして、あれこれ不器用に努力する様子である。美咲が「お風呂上りに牛乳を飲むとこの上ない幸せを感じます」と言うと、わざわざ社員用のジムを作り、偶然のようなふりをして美咲と同じ時間にジムに行く。
美咲の前で本当は苦手な牛乳をうまそうに飲んで見せる。それを見た美咲が微笑むと、仏頂面をしながらも、こらえきれずに頬が緩み、かすかにニマッとしてしまうその顔といったら......。
それでも自分が恋をしていることが鮫島にはよくわからない。ライバルホテルの社長・和田(北村一輝)への対抗上、婚約者として見せびらかすのに「ちょうどいいからだ」とあくまで上から目線。しかし、有能な社長秘書・舞子(小池栄子)の目には鮫島の遅すぎる初恋が一目瞭然である。
冷静で有能な社長秘書・・・実は母のような愛
この舞子が、徳川家光を支えた春日局みたいに鮫島を支えているのだが、一見冷静だけど実は母のような愛で鮫島に尽くしている姿が心温まる。美咲がパリ勤務時代にベルギー人の彼氏と付き合っていたと聞いた鮫島が「外国人と付き合った女は嫌だ」と言うと、舞子は「何が嫌なんですか。彼女が外国人の優しさを知ってしまったことですか、それとも肉体的なことですか」と遠慮なく問い詰める。鮫島は「わかんないよ。わかんないけど嫌なんだよ」と駄々っ子だ。だけどこんな本音を持つ日本人の男は結構いる気がするなあ。あんまり表立って聞いたことはないけど、なんとなく。
厳しい舞子は「器が小さいのです。世の女性は器の大きい男に身も心もゆだねたいと思うものです」と容赦ない。しかしそこは正直な鮫島、「俺に器の大きさを求めんな」と口をとがらす。自分でも器の小ささは重々承知しているのだ。
こうして鮫島はちょっとずつ成長していくというわけだ。とにかく、カワイイ大野くんと彼を鍛える小池栄子のカッコイイ「男前」さが気持ちいいドラマである。(水曜日よる10時~)
カモノ・ハシ