世界の富の半分が、わずか1%の富豪や権力者に集中している実態が流出したパナマ文書で明らかになってきた。不正に入手した金や課税を逃れるために、税金の極めて低いタックスヘイブン(租税回避)地に設立した会社に資金を移し、運用して富を築いているのだ。タックスヘイブン地に設立された会社はここ40年で21万社にのぼるという。
パナマ文書とは中米パナマで4番目に大きいという法律事務所「モサッカ・フォンセカ」の顧客資料で、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)に参加している世界中の400人の記者が運用実態を究明中だ。ICIJの記者ウィル・フィッツギボン氏は「まだまだ新しい事実を見つけ出しているジャーナリストもいます。今後、何か月たってもパナマ文書の記事は出続けるでしょう」と話す。
プーチン大統領、習近平国家主席の友人・身内もペーパー会社で資産運用
ロシアのプーチン大統領のごく親しい友人で、著名なチェロ奏者セルゲイ・ロルドゥーギンはタックスヘイブンのバージン諸島に複数のペーパーカンパニーを所有していて、日本円にして2000億円にのぼる資金運用をしていた。プーチン大統領の別の友人たちが設立したペーパーカンパニーにも、国が運営する銀行から巨額の資金が流れ込み、それを頻繁に移動させて出所が分からないようにしていた。
パナマの法律事務所にとって最大のお得意先は中国だった。こともあろうに、腐敗撲滅を進める習近平国家主席の姉の夫がペーパーカンパニーを所有していたことも明らかになった。義兄は香港の高級マンションの1室を2000万香港ドル(約3億円)で購入していた。中国国民は高い関心を寄せているが、厳しい情報統制で「姉の夫」で検索しても閲覧できない状態という。
イギリス・ロンドン中心部の不動産売買の実態も明らかになった。ビルの多くは得体の知れない外国人投資家が所有していて、このためロンドンの地価はここ2年で2倍に高騰している。高級住宅街の一角には、夜になっても明かりが消えたままのマンションがある。1部屋10億円という超高級マンションで、富豪たちが投資のために購入し誰も住んでいないためだ。パキスタンのシャリーフ首相の娘の会社もこうしたマンションを4部屋も購入していた。
民主主義の根幹崩す権力者の不正・不道徳
タックスヘイブンに詳しい青山学院大学の三木義一学長はこう指摘する。「私たちの社会は、民主主義の仕組みのなかで税負担が決められています。ところが、権力者や一部の富裕層が租税回避を狙って、国境を越えて公然と税金を逃げちゃう。民主主義そのものが危なくなっているんです。日本からもタックスヘイブンのケイマン諸島などに約61兆円の投資が行われていると言われていますが、日本人がどの程度参加しているかまだわかっていません」
鎌倉千秋キャスター「対策はありますか」
三木学長「「これまでOECDを中心にタクスヘイブンの規制を行ってきましたが、そのたびに新手を編み出し、イタチゴッコが続いています。国際社会はイタチゴッコを止め、こうした金融取引へ課税する仕組みに発想を転換すべきだと思います」
国境を越えた犯罪には、国境を越えてとことん追い駆け、報道していく記者魂が必要だ。政府の圧力に縮こまっていられない。
モンブラン