<無伴奏>
女子高生が走り抜けた70年学園闘争と危なっかしい恋・・・初体験の相手は実姉と異様な親密さ

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ⓒ2015「無伴奏」製作委員会
ⓒ2015「無伴奏」製作委員会

   1969年、全共闘の学園闘争がピークを迎えた年だ。仙台も例外ではなかった。女子高校生の野間響子(成海璃子)は仲間と制服廃止闘争委員会を結成して、「角襟ブラウス禁止、パーマ禁止、カチューシャ禁止」の校則に叛旗を翻す。それが「闘争の真似っこ」であることは響子も認識していた。本当はベトナム戦争も安保も沖縄もマルクスも革命もどうでもよかったのだ。

   響子はクラスメートの案内でバロック喫茶「無伴奏」を訪れる。そこで相席したのが大学生の堂本渉(池松壮亮)だった。彼の友人である関祐之介(斎藤工)と高宮エマ(遠藤新菜)のカップルもいた。祐之介はニヒルでミステリアスな男だった。渉はパッヘルベルの「カノン」をリクエストした。「カノン」はこの映画の通奏低音として何度も流れる。

作家・小池真理子の反自叙伝

   ある日、機動隊との衝突が起こり、「無伴奏」に逃げ込んだ響子は渉たちと再会する。響子は「無伴奏」に通ううちに渉に強く惹かれ、初めてのキス、初めてのセックス。しかし、渉と超美人の姉・勢津子(松本若菜)との異様な親密さに二人の体の関係を疑う。

   渉の家の離れには茶室があった。そこで4人はよく会った。茶室は小さい「にじり口」から入る。身をにじらして中に入る。俗世間と訣別するにじり口は異界への入り口でもあった。響子はやがて衝撃的な「異界」の出来事を目撃することになる。

   原作は小池真理子の半自叙伝的作品である。作者が体験した「激動」の1969~71年の出来事がベースとなっている。若手実力派の成海璃子、池松壮亮、斎藤工がナイーブな若者たちを好演。新人の遠藤新菜は溌剌とした魅力を放っている。

   登場人物たちがひっきりなしにタバコをふかすのが気になった。が、当時の学生たちは喫茶店でたばこを吸わない方が珍しかった。高校生や女性がたばこを吸うことも古い常識や世の決まりごとに対する一種のレジスタンスだったのだ。

佐竹大心

オススメ度☆☆☆

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