新国立競技場「オリンピック開会式にはもう色褪せ」完成しても木材部分すぐ変色
新国立競技場のデザインをしたザハ・ハディド氏(65)が3月31日にフロリダ州のマイアミで亡くなっていた。ザハ氏は「アンビルト(建築されることのない)の女王」などといわれたが、建築界のノーベル賞といわれるプリッカー賞を女性で始めて受賞するなど、世界的に評価された建築家だった。そんな彼女が、新国立のデザインが白紙になったことで落胆していたことは想像に難くない。その後、隈研吾氏の案が採用されたが、彼女は「我々のデザインと驚くほど似ている」と批判していた。
週刊ポストでは13年にプリッカー賞を受賞した国際的建築の伊藤豊雄氏が「競技場はかならず負の遺産になる」と嘆いていると報じている。<「A案(隈研吾氏の案=筆者注)の設計では、スタンドを覆う屋根は木材とスチールを組み合わせた構造です。木材部分の可燃リスクは消えず、仮に聖火台を天井近くに設置すれば、そのエリアの屋根を外す必要が生じます。
またスタンド席近くに置けば、その付近の観客席は取り払わなければならない。いずれにせよ、当初の設計プランから変更せざるを得ない」>
12年にザハ・ハディド氏のデザインが選ばれたことが混乱の始まりだった。伊東氏が続けていう。<「A案の断面図や平面図を見ると、6本の柱でスタジアムを支える構造や108本の柱、54本の通路、8か所ある地下トイレの位置までザハ案とほぼ同じ。
偶然の一致の域を超えており、隈さんのA案はザハ氏のデザインを借用したと言われても仕方のないものです。もちろん、ザハ案の特徴である『キールアーチ』と呼ばれる2本の巨大な鋼鉄製アーチで屋根を支える構造は採用していませんが、専門家の目から見れば、『一皮むけば同じモノ』との印象です」>
さらに木材を多く使っていることでのマイナス面もあるという。<「木材はカビも生えれば変色もします。私が設計に参加したある地方公共団体の建築物は屋内であるにもかかわらず、天井の木材部がわずか半年で変色した。現行のままだと、19年11月に完成したとして五輪が開幕する8か月後には、天井の色が曇天のようなくすんだグレー色に変わってしまうと考えられます。
そもそもA案なら、20年位で屋根の総取り換えを迫られる事態も予想されます。その負担については議論されていません」(伊東氏)>
A案では競技場の周囲をプラントボックス(育成容器)に植えられた樹木が覆うから、害虫被害に加え、その維持管理にも多額の費用がかかるはずだ。屋根をはじめとした木材のメンテナンス、樹木管理など競技場全体の維持管理費を合わせると、完成から20年で、建設費と同額程度の費用負担が発生している可能性があると、週刊ポストはいう。その費用を誰が負担するのかは議論の俎上にすら載っていないのだ。
<「もし、管理が行き届かなければ、2040年頃には、プラントボックスの樹木は荒廃して見る影もなくなり、広大な敷地の中心に灰色に変色した巨大な『廃墟』がポツンと建つ。そんなことも考えられます。このままでは新国立は国民にとって『レガシー』ではなく、負債になりかねないのです。(中略)
このままでは国民の間にある『A案で新国立を建てていいの?』といったわだかまりが解消されません。そんな状態で五輪が気持ちよく迎えられるでしょうか。いま必要なのは、JSCの大東和美・理事長なり、遠藤・五輪相なりが、『A案はこれだけ優れているから、大いに期待してください』と国民に胸を張って説明することです。それができないのなら、今一度、A案採用を再撤回するぐらいの覚悟を見せるべきではないでしょうか」(同)>
2度あることは3度ある。新国立競技場は「新廃墟」とでも命名したらどうか。