東京・中野区の通称桜山通りの桜の伐採がひと騒動となっている。JR東日本は2月(2016年)に、桜の枝が線路に落下する危険があるとして、中野区と相談して伐採を始めた。これにビックリしたのは、ここの桜を毎年楽しみにしている住民たちだ。
岡安弥生レポーターが見に行った。「ああ、この桜は枝のあちこちが切られていますね。こちらの木は幹からバッサリといかれています」
空襲でそれまであった桜並木が焼けてしまい、住民が60年前に国鉄の許可を得て植え直したもので、現在は区が所有し、JR東日本が維持・管理を行うことになっている。
枝が折れて中央線の線路に落ちる
岡安が去年(2015年)5月、家を建てたというお宅を訪ねた。「2階から桜を見るようにわざわざ設計して、今年の花見を本当に楽しみにしてました。ところが2月9日の深夜2時半ですね。うちの主人が『大変だ、大変だ、桜が切られている』って起こされて、外を見たらチェーンソーでウィーンウィーンといました」
2階から眺めても桜は1本もない。
伐採しないで対策をとることはできなかったのか。「モーニングショー」は中野区を直撃した。中野区都市基盤部の尾崎孝部長が言う。「この桜は線路の斜面に植えられていて、その下に中央線が走っているわけです。昨年8月には枝が折れて線路わきに落ちたという話もありました。電車の安全運航という視点から考えて、今回の伐採はやむを得ないと考えています」
37本ある桜のうちすでに2本が切り倒され、老朽化しているあと7本を今後伐採予定という。
60年前に植樹した住民たちには説明なし
住民が反発するのは伐採だけが理由ではない。何の説明もなく、いきなり切ったということに腹を立てているのだ。中野区側は「並木のそばに伐採告知の看板を掲げ、近隣住民にはビラも配った」という。しかし、住民は「『桜伐採』とかは言わなくて、『樹木の伐採を行います』と小さく書いてあるだけなんです」という。
ここから先がJR東日本と中野区の言い分が微妙に異なってくる。JR東日本は「事前に中野区より地元町会などに確認していただき、『伐採して問題ない』との回答を得た上で作業しました」という。ところが、区側は「近隣の方にお知らせをしているとJRから聞いておりますので、区としては説明会は必要ないと判断しました」
要するに、どっちも本気で住民に知らせる気はないから、地元への説明も互いに押し付け合ったすえに実施していなかったのだ。
長嶋一茂(スポーツプロデューサー)「ビラを配ったというんだけど、伝わってないんじゃ配ってないのと同じなので、『なぜ切るのか』という話し合いをちゃんとしてからでいいんじゃないかなと思いますがね」
吉永みちこ(作家)「こっちが所有していて、こっちが管理している。その両者が合意しているということで法律的には問題がないのかもしれないけど、これだけの桜で街の名前にもなっているとすると、地域住民の共有財産とも言えると思うんです。そこの認識が欠けているじゃないですか」
司会の羽鳥慎一「残念ですよね。せめて満開の後にならなかったのかと思います」
ビレッジマン