「日本映画史上初、実際にエヴェレストの標高5200メートルでのロケを敢行」と謳われている。確かに壮大なスケール感で、岩登り、落下、宙吊りなどスリリングなシーン満載だ。映像も素晴らしいが、謎解きのミステリーにもなっている。原作は夢枕獏の同名小説。
宙吊りで切られたザイル
1924年、エヴェレスト山頂を目指し行方不明になったジョージ・マロリーという登山家がいた。マロリーははたして山頂まで到達したのかどうかは「マロリーの謎」と呼ばれていた。カメラマンの深町誠(岡田准一)はその謎に迫ろうとネパールをほっつき歩いているときに、マロリーのものと思われるカメラを骨董屋で見つける。
しかし、「それはオレが盗まれたものだ」と奪っていった男がいた。天才クライマーと呼ばれる羽生丈二(阿部寛)だった。「クライマーとしては完璧、だが人間としては最低」とライバルから言われている男だ。
羽生は岸文太郎(風間俊介)と登山中に2人とも宙吊りとなり、下の岸のザイルは切られ、落下して死亡した。山岳会は「ザイルが切れたのは岩で擦り切れたためだ」と発表するが、羽生は山岳会を追われる。羽生は自分が生き残るためにザイルを切ったのか。
「生きて帰らない登山家はゴミだ」
深町はあるとき羽生に、「マロリーは死の直前、エヴェレストの山頂まで行ったのでしょうか」と尋ねる。「死んだ人間なんてゴミだ。生きて帰らなかった奴が頂上を踏んだかどうかなんて、どうでもいい」と羽生はまるで関心がないようだった。では、あのマロリーのものと思われるカメラを奪ったのはなぜなのか。
羽生と深町は2人でエヴェレスト登頂に挑むことになった。標高5000メートルにたどり着くと、羽生は「ここからはオレたちは無関係だ」とひとりで山頂を目指す。だが、深町が窮地に陥ると羽生は助けに戻るのだ。死んだらゴミだというのは、だから死ぬな、だから死なせないということだったのだ。
深町「マロリーは『(山に登るのは)そこに山があるからだ』と言いましたが、あなたはなぜ登るのですか」
羽生「オレは違うな。俺が今ここにいるからだ」
悪天候のため深町は羽生を見失ってしまう。果たして羽生はどうなったのか。羽生が残したメモにはこうあった。「足で登れなくなれば手で登れ。手で登れなくなったら指で登れ。指で登れなくなったら歯で登れ。歯がダメになったら目で登れ。すべてダメになったら、想いで登れ」
羽生の気迫に深町は圧倒される。そして、驚愕のラストが控えているのだった。
オススメ度☆☆
佐竹大心