地上波の連ドラが続々と最終回を迎えるこの時期は、ドラマ好きには寂しい季節だが、目をBSに転じてみれば、こんなドラマをやっていた。てっきり黒木瞳が嫌な女を演じるのかと思い、そりゃハマリ役だと思って見てみたら、嫌な女は鈴木保奈美で、黒木は嫌な女に翻弄されるほうだった。
大手銀行勤めから転身して37歳で弁護士になった石田徹子(黒木瞳)は、女詐欺師の小谷夏子(鈴木保奈美)とは同い年の遠い親戚で、子どもの頃から徹子の要領の良さに煮え湯を飲まされ、損ばかりしてきた。
そんな夏子が徹子に弁護の依頼にくる。親戚のよしみで引き受けたものの、夏子の身勝手さに振り回されウンザリなのだが、どこか憎めない夏子に引きずられながら自分も変わっていくという成長物語でもある。あくまでもコメディタッチで、気楽に楽しめるドラマだ。
幼少時代の子役・豊嶋花 これがまた「子どものズルさ」巧みな演技
夏子について、徹子が思い出した子供の頃のエピソードにこんなものがあった。祖母が2人のためにお揃いの向日葵の柄のワンピースを縫ってくれたのに、翌日、徹子のワンピースはビリビリに引き裂かれていた。お揃いというのが気に入らず、夏子がやったのだが、泣きたい気持ちを堪えてじっと我慢している徹子の前で、夏子は「私じゃないもん」と泣き叫ぶ。大人たちはオロオロし、夏子をなだめ、犯人探しはうやむやになった。夏子は子どもの頃から大人たちに取り入るのがうまく、天性の詐欺師だったのだ。
夏子の幼少時代を演じる子役の豊嶋花が巧い。朝ドラ「ごちそうさん」で杏が演じため以子の幼少時代も演じていたが、表情が豊かで、大人をごまかすズルさをちゃんと魅せる。
婚活詐欺、就活詐欺、男の騙し方学べる特典付き
20年間の腐れ縁を描くので、ふたりとも初回の設定は37歳。服装などで誤魔化しても、さすがにそう見えないのはつらいが、いずれ実年齢に追いつくわけだから良しとしよう。そもそもコメディだし。
毎回、夏子にダマされる男が登場するが、彼らはみんな被害者でありながら、夏子によって一時は幸せを味わったという感謝の気持ちもある。夏子はただの女詐欺師ではなく、魅力的な女性なのだ。夏子を演じる鈴木保奈美は、かつての当たり役「東京ラブストーリー」の赤名リカのその後、といった感じで、男を翻弄するのが巧い。上目づかいの思わせぶりな態度に、あの個性的な可愛い声で男はメロメロになってしまうだろう。
婚活詐欺に就活詐欺など、いろんなタイプの詐欺の手口が見られるのもお得といえばお得だし、男の騙し方を学べるという特典もある。桂望実の小説が原作で、すでに映画化が決定(6月公開予定)しており、しかも黒木が初監督をつとめるという。映画版では、吉田羊が徹子、木村佳乃が夏子を演じる。面白い作品ではあるが、わざわざ映画化するようなものかなという気がしないでもない。(日曜よる10時~)
くろうさぎ