両親から虐待を受けたと中学2年の男子生徒(14)が神奈川・相模原市児童相談所(児相)に保護を求めたが、黙殺され自殺を図って先月末(2016年2月)に死亡した。親の同意がなくても一時的に保護できる権限を持つ児相が、その役割をまた果たせなかった。
「誰も助けてくれない。家にも帰れない」親類宅で首つり
児相の鳥谷明所長が22日(2016年3月)の会見で明らかにした経緯は次のようなことだ。最初に学校から虐待の連絡を受けたのは男子生徒が小学6年生だった2013年11月で、児相も「両親の暴力による虐待」と認定し、相模原市の担当課が両親に面接して指導している。
ところが、男子生徒が中学に入学した直後の翌年5月末、親とトラブルでコンビニに逃げ込み、「暴力を振るわれている」と店員に訴え、通報を受けた警察が保護した。警察からの通報を受けた児相が6月に両親と面接、両親に継続的に児相に通所して指導を受けるなどの対応を求めたが、男子生徒はその後も再三にわたり児相を訪れて「保護してほしい」と訴えた。しかし、児相は「親子関係に改善が見られた」ことを理由に保護を見送っていたという。
児相は10月下旬になって両親に一時保護を提案するが同意を得られず、踏み込んだ対応をしなかった。それから1か月足らず、11月中旬に男子生徒は親類宅で首つり自殺を図り、意識不明のまま先月28日に死亡した。
厚労省指示「保護者の反発恐れず強制保護せよ」
「あさチャン!」の取材に母親はこう答えている。「手を上げるようなことはなかったは言いません。でも、家で決めることを守らなかった。それが悪いことなんだと分かってもらえなかった時ってどうしたらいいんですか」「(子どもが)施設に行きたいみたいな話はしていたけど、それがどこまで本音だったんですかね。親に心を開かなくなったのは児相に通い始めてからです」。虐待は「しつけの範囲内」で、子どもが頑なになったのは児相のせいだと母親はいう。
児相は「適切な対応をしてきたという」が、児相には親と引き離して強制的の子供を保護する権限がある。子供が入所を求めてきたなら、少なくとも施設で保護してしばらく様子を見るということもできたはずだ。
TBS解説委員の龍崎孝はこう指摘する。「児相の役割は子どもを守るための駆け込み寺。強制保護を保護者の反発を恐れて控えるのは誤りと厚労省も通知もしています。(虐待の)根拠を見極めるには高度の専門性や能力が必要ですが、スタッフとして配置されているのは定期異動で配置される県職員のケースもあります。きちんとした機能を発揮できる体制づくりを考えていくべきです」