認知症が毎日集まるデイサービス施設!進行遅らせるための情報交換とカラオケ
これはいま現在のお話。認知症は国民病になりつつある。そんな当事者たちが語り合った座談会を週刊ポストは掲載している。前代未聞かどうかはさておき、おもしろい企画である。東京・町田市に民家を改装したデイサービス施設「NPO町田市つながりの開 DAYS BLG!」という1軒家がある。BLGには毎日10人ほどが集うが、みんな認知症と診断された人々だ。当日、何をするかを本人が選べるのが特徴の施設で、昼食後のカラオケは定番だそうだ。
市内で妻と2人暮らしの奥澤慎一さん(74)は3年前から通い始めた。建設会社勤務だった園田士郎さん(仮名、62)は定年後も嘱託として働き、勤務のない日にここへ来る。神奈川県在住の片岡信之さん(仮名、64)を加えた3人に話を聞いている。
片岡さんは30歳ぐらいから覚えられなくなってしまって、メモをしないと頭に何も残らないという。医者に若年性アルツハイマーの傾向があるといわれたのが50代後半。園田さんは地方の工事現場への長期出張が多かった頃、家族と「お土産を買って帰る」「この日に帰るから食事しよう」と約束しても忘れることが続き、娘にきつく叱られたそうだ。そこで専門医のところへ行って試験を受けたら、アルツハイマーだといわれたそうだ。「ぽつぽつと抜けはあっても、電車も一人で乗れるでしょ。小説も読めるし、好きな料理は自分で作っていましたから」(園田さん)
奥澤さんは「6年ほど前のことです。コンビニでタバコを一箱買いました。当然、お金を払うわけですね。ところが不思議なことに、レジの前に陳列してある同じ銘柄のタバコをもう一箱取って、ポケットに入れてしまう」ために警察に突き出されたことが何回かあった。
今は3人ともお酒はたしなむ程度だという。認知症が進むと酒で失敗することが多くなるようだ。園田さんは毎日日記を書く。それも当日ではなく、次の日に思い出して書くという。記憶力をテストするのだが、食べたものすら忘れることがあるという。
飛び入りの72歳の鳥飼昭嘉さんはクロスワードや数字パズルを毎日やると、結構頭を使っていいと話す。鳥飼さんは大手電機メーカーの設計担当だった30年ほど前に、くも膜下出血で倒れたことがきっかけで脳血管性認知症と診断された。鳥飼さんは、わが子を連れて遊び場に行ったのに、子供の存在を忘れて1人で帰ってきてしまったこともあったそうだ。
奥澤さんは3年前、奥さんがBLGを見つけてくれて、もう一度社会や仲間とつながれるようになり、希望が差したという。鳥飼さんは「症状は改善できますよね。僕は『後ろ歩き』がいいと聞いて、公園でやっていますよ」と話す。奥澤さんは「認知症でも、人間性は取り戻せる。あとは世の中です。家族だけじゃなくって、近所とか町の人が見守る。そういう社会になってほしい」と語る。
奥澤さんは取材の最後にこう呟いたそうだ。「みんないつかは認知症になる。そういう時代です。でも、まだみんな、どこか他人事なんだよな」
認知症は治すことはできないが、予防や脳を活性化させることで進行を遅らすことはできるそうだ。そのためには「道」のつくものをやるといいと、脳学者の加藤俊徳氏がいっていた。華道、茶道、ちょっとハードだが剣道に柔道。そういえば、私の先輩に剣道をいまでもやっているのがいるが、80歳近いのに矍鑠として、斗酒なお辞せずである。彼のところに入門するかな。