最高裁がズバリと踏み込んだ。2007年、愛知県大府市で認知症で徘徊していた男性(当時91)が列車にはねられ死亡した事故で、JR東海が家族に求めた損害賠償請求に、最高裁はきのう1日(2016年3月)、家族には責任なしとする判決を下した。判断は「家族だからと一律に監督義務を負うわけではなく、生活状況や介護の実態を総合的に考慮すべきだ」としている。
被告の長男は「良い結果に父も喜んでいると思います」とのコメントを出した
JR東海が妻と長男に720万円請求
JR東海は民法の規定(責任能力がない人の賠償責任は監督義務者)をもとに、列車の遅延損害720万円を妻と長男に求め、一審の名古屋地裁は請求を全額認めた。二審の名古屋高裁は長男の責任を認めず、妻に半額の360万円の支払いを命じたため、双方が上告していた。
事故は同居する妻が介護に疲れてうたた寝をしたわずかな隙に男性が外出して起きた。妻(85)も要介護の状態で、長男は横浜に居住していたが、妻を近くに住まわせて手伝わせるなどしていた。それでも高額の賠償を払うべきなのか。
高齢化が進み、認知症も老老介護も増える中で、家族がどこまで責任を負えるかという深刻な命題だ。介護施設関係には、賠償が確定した場合は収容者を閉じ込めなければならなくなると、危機感を抱かせてもいた。
文
ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト