一人っ子亡くした高齢者1000万世帯、戸籍ない子供1300万人
さらに、「失独者」と呼ぶ、不慮の事故などで子供を亡くした親の問題がある。いま全国で100万世帯といわれるが、将来は1000万世帯になるとみられている。政府は支援金支給や受け入れ施設の建設を進めているが、十分なはずがない。少子高齢化は社会保障の充実をさらに難しくする。
ひずみはまだあった。第二子を産んでしまった場合だ。北京市で取材した例では、年収の2倍430万円の罰金が払えなかったために、子供に戸籍が与えられず、本人証明のIDカードもない。法律上存在しない子だ。「黒孩子(ヘイハイズ)」と呼ぶ。2010年時点で1300万人といわれる。
IDカードがないと、汽車にも飛行機にも乗れず、病院にも行けない。進学も就職もできない。母親は「早く人間として扱ってほしい、今は影のような存在」という。7歳になる女の子は手書きのIDカードを作ったり、漫画の吹き出しに「1300万人の私たちに戸籍をください」と書いたりしていた。英語も口走るなど、恐ろしく利発な明るい子だった。それでも「黒孩子」である。
習近平主席は昨年(2015年)、「無戸籍をなくせ」と大号令をかけたが、罰金を払った人たちから「不公平だ」という声が上がって立ち往生だという。
「一人っ子政策」とは人類未曾有の実験である。天につばしたとでもいいたくなる。
ヤンヤン