子宮頸がんワクチンで副反応(薬剤でいう副作用)の訴えが相次いだことから、国が積極的勧奨を中止して2年以上経過したいまも、接種を勧めるべきかどうか決められずにいる。
毎年1万人がかかり2700人が死亡している子宮頸がんだが、接種する人の激減で、今後は患者が増えるのではと懸念する声も強まっている。日本産婦人科学会は「摂取しないで、将来、子宮がんになった時に悔しい思いをする人が増える。国は積極的に接種の呼び掛けを再開すべきだ」と異例の訴えをしている。
子宮頸がんは粘膜に感染するHPV(ヒトピローマウイルス)のうち、発がんリスクの高い15種類のウイルスが原因とみられている。ワクチンとしてはサーバリックス(グラクソ・スミスクライン社)とガーダシル(MSD社)の2種類が厚生労働省の承認を受け販売されている。
ワクチンは予防したい病気の原因となるウイルスの毒性を弱め、体内に注入して免疫力を強める効果があるが、一定の副反応が起きる。人種や体質などによって副反応の症状や発生頻度が異なることも少なくないことから、各国は独自に科学的根拠に基づいた判断が必要とされている。日本は子宮頸がんワクチンで判断停止が続いているのだ。
接種翌日に意識不明、高熱!いまでも右手だけでは字を書けない
子宮頸がんワクチンは世界100か国以上で接種されており、日本でも小学校高学年から高校生の女性を対象にすでに340万人(推定)が接種を受けている。ところが、接種後にしびれや痛みを訴える人が続出し、国は2か月たらずで積極的な接種の呼びかけを中止した。
ワクチンの有効性とリスクを科学的に評価する仕組みがぜい弱で、副反応の症状がワクチンによるものかいまだに明確な判断ができずにいる。大学1年生の酒井七海さんは、高校生のときに子宮頸がんのワクチンを接種した。直後に右手と右足が自由に動かせない状態に陥り、今も続いている。「右手がうまく伸びず、右手だけで(文字を)書くことはできないんです。びりびり電気が流れているみたいに痺れます」と訴える。酒井さんとほぼ同時期にワクチンを接種した人たちからも手足のしびれや痛みなどの副反応を訴える人が続出した。
勧奨を中止した厚労省は2013年6月、判断材料となる科学的データを集める目的で副反応の追跡調査を行った。制度では副反応は医師を通じて報告されることになっている。昨年(2015年)9月に報告された調査結果は、副反応が起き回復されずに症状が続いているとされた人はわずか186人だった。その中に、今も手足が動かない酒井さんの名前はなかった。
不審に思った酒井さんの父親が国の資料を調べたところ、すでに回復したことになっていた。酒井さんはワクチン接種した翌日に失神、40度近い高熱に襲われ病院を受診したが、医師がこの時に作成した国への報告書には「症状は1日で収まり回復」と記録されていたのだ。酒井さんはその後に別の医療機関を受診したが、受診した医療機関は国への報告をしなかった。報告用紙にあった主な副反応の症状に該当しなかったことが大きな理由だった。
7日以内に回復と報告された1297人は追跡調査の必要はないと判断され、現状確認はされなかった。さらに病院を変って連絡できなかった人が845人もいた。