先週18日(2016年1月)、家政婦と実の娘2人が争っていた遺産相続訴訟の判決が東京地裁であり、勝訴したのは意外なことに家政婦だった。発端は11年に97歳で死亡した女性が残した「遺産はすべて家政婦に渡す」という遺書だった。
裁判長「長年献身的に使えた家政婦に遺産を譲るのは不自然ではない」
68歳の家政婦は中学を卒業してから、50年にわたり住みこみで女性の世話をしてきた。一方、姉妹は海外移住するなど母親のそばにはほとんどいなかった。ところが、娘側は母親が死亡すると、その日に遺産約3000万円を自分たちの口座に移した。老後は女性の遺産を頼りにしていた家政婦は住む家も失い、遺産の返還を求めて提訴した。
娘側は「母親は高齢で判断能力が低下していた。遺書は家政婦が不正に作成させたもの。実の娘を差し置いて家政婦に渡すことは考えられない」と反論した。
裁判長は「たとえ家政婦であっても、長年付き添い身の回りのすべてを担ってきた家政婦に対し、自己の財産のすべてを譲るという心境になったのは、人の心情として不自然なことではないと考えられる。娘たちはこれまで長年金銭的な援助を受けていた」として、献身的に仕えた家政婦に遺産を渡すように命じた。
中学卒業してからずっと一緒。娘同然
司会の小倉智昭「家政婦さんに全部遺産を渡すのは異例ですよね。娘たちは母の介護をほとんどしてなかったですね」
深澤真紀(コラムニスト)「女性にとってすれば、家政婦といっても長年の付き合いで、娘同然だったでしょう。妥当な判決だと思います」
高齢化とともに介護問題が深刻だが、遺産相続をめぐるトラブルも増加傾向にあるという。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト