2012年に鹿児島市で起きた強姦事件で、福岡高裁宮崎支部はきのう12日(2016年1月)、懲役4年とした鹿児島地裁の一審判決を破棄し、男性被告に無罪を言い渡した。体液のDNA鑑定で別人と分かったためで、判決は鹿児島県警科捜研の鑑定を「稚拙」と厳しく非難した。
冤罪が明らかになった岩元健悟さん(23)は涙を流して、「闘ってよかった」と話した。岩元さんは終始「やってない」と否認を貫いたが、逮捕から2年4か月間勾留され、DNA鑑定で「別人」と分かった昨年(2015年)3月に保釈されていた。
再鑑定で「精液は別人」被害女性の証言も信用できない
事件が起こったのは2012年10月。深夜の鹿児島市内で、当時17歳の女性が「知らない男に暴行された」と訴え出た。女性は3日後、「犯人を見つけた」と110番してきて、名指しされた岩元さんは1か月後に強姦容疑で逮捕された。
鹿児島県警は女性の胸から検出された唾液のような付着物と体内から検出された精液を鑑定した。付着物は岩元さんのDNA型と一致したが、精液は微量で鑑定不能としていた。一審判決は付着物と女性の証言を重視したものだった。
控訴審で裁判所は精液の再鑑定を「足利事件」なども手がけた押田茂実・日大名誉教授に依頼し、「別人」と出た。押田教授は「鑑定は簡単に出ました。なのになぜ『鑑定不能』になったんだろうと思いました」と話す。県警はDNA抽出後の残り溶液や鑑定過程のメモをすべて廃棄していたことも明らかになった。
岡田信裁判長は「鑑定技術が著しく稚拙で、DNAが抽出できなくなった可能性や、DNA型が出たにもかかわらず、被告と一致しなかったために、事実でない報告をした可能性すら否定できない」と指摘した。DNA鑑定の間違いというより、証拠隠滅を図ったのではないかという疑問だ。女性の証言についても、「事件直近に性交渉はなかった」としながら、被告以外の精液が検出されたことで「信用できない」とし、他の証言にも疑義があるとした。
押田教授は「(DNAは)偽造することができます。ほんのちょっと混ぜただけであなたを犯人にすることも簡単にできます」と恐ろしいことをいう。科捜研はそこまではやっていなかったことは分かったが、まさに絵に描いたような冤罪だ。