談志門下・立川談春の自伝的小説のドラマ化である。談春を二宮和也、師匠の談志をビートたけしが演じた。兄弟子・志の輔を香川照之、弟弟子・志らくを濱田岳、さらに談春と親しいさだまさしが寿司屋の大将、イヤミな評論家をリリー・フランキーが演じるなどキャスティングの妙がたっぷり。
キャスティング、バック曲にも粋な仕掛け
立川談春はチケットの取れない人気落語家だが、ドラマ「下町ロケット」では経理部長・殿村役を好演、俳優としても存在感を示している。どちらかというと恰幅のいい談春をニノが演じると聞いて、イメージが違い過ぎると思ったが、そんな些末なことは気にならないほどドラマの出来はよかった。
原作では、競艇選手になりたかったが高身長のため断念して談志の弟子になるという内容だったが、ニノの身長では辻褄が合わなくなるので、そのエピソードをバッサリ削り、談志に弟子入り志願しに行く17歳のシーンから始まる。32歳のニノがちゃんと17歳に見えるから凄い。これも一種の才能かもしれない。
談志役のたけしも滑舌が悪く何を言ってるかわからない場面もあったが、見ているうちに気にならなくなり引き込まれた。いま談志を演じられるのはたけししかいないだろう。弟子たちに無理難題を押し付け、理不尽なことも強いるが、深い愛情を持って弟子の成長を見守る温かい談志の表裏をうまく演じていたように思う。
談かん(のちのダンカン)が叱られるのを覚悟で談志の弟子を辞めて、ビートたけしのところに行きたいと言いにいくと、1本のウィスキーに自分の名刺を貼り付け、「これを持って行ったら、たけしも断らないだろう」という場面を、当のたけしが演じるなど遊び心満載である。ダンカンも宅配便業者の役でチラッと出ていた。
先代の中村勘九郎を息子が演じたり、先代の三遊亭円楽を6代目が演じていたり、「流星の絆」でニノの父親を演じていた寺島進がまた父親役だったり。はたまた、年末に相方が逮捕されたキングオブコメディの今野浩喜、「あさが来た」の大番頭はん役山内圭哉が借金取りを演じるなど、隅々にまで見逃せないキャスティングがいい。談々(北村有起哉)、関西(宮川大輔)、ダンボール(新井浩文)と兄弟子たちも個性派ぞろいだった。