埼玉・戸田市の老人ホームできのう4日(2016年1月)未明、「入居者の87歳の女性が血まみれになっている」と警察に通報があり、病院に運ばれたが死亡した。同じフロアの入居男性(78)がベッドの鉄製の柵で殴りつけたもので、殺人容疑で逮捕された。
女性は要介護5で寝たきり、男性は要介護4で日常生活全般に介護が必要だが、車椅子で動き回ることはでき、認知症の症状があった。警察の調べに、「うるさかったから俺が叩いてやった」と話している。
要介護4と要介護5
施設の職員が駆けつけた時、男性は車椅子で女性のベッドの脇にいた。男性の部屋は同じフロアで15メートルほど離れていた。凶器になった転落防止用の柵は取り外しできるタイプで、重さは約2キロあった。
ホームは介護付きで、6階建に現在145人が個室に入っている。全室に緊急通報装置があり、夜間も2時間おきに職員が見回りをしていた。施設の話では、男性はこれまで暴力的な行為はなく、また女性も騒ぐようなことはなかったという。複数の入居者の親族は「施設は全般にいいです」「認知症の人は他人の部屋にも入ってきてしまうので、ドアに鍵をかけたりすることがあった」などと話している。
介護体験もある淑徳大学の結城康博教授は、「叩いた側の責任能力が問題になる」という。要介護4は排泄・入浴・着替えなど日常のほとんどに介護が必要だが、身体的能力はあり車椅子で動き回れる。ただ、認知症があると問題行動や理解力の低下があり、これも介護度に関わるという。
施設の管理体制十分だったか
青木理(ジャーナリスト)「刑事責任が問えるかどうかですよね」
結城「介護施設ですから、管理体制も論点にはなると思います」
司会の羽鳥慎一「柵は固定するわけにはいかないですもんね」
結城「固定すると閉じ込められている感じになるので、難しいです」
浜田敬子(「アエラ」編集長)「認知症とそうでない人が近くにいるというので驚きました」
結城「特別養護老人ホームだとフロアで分けたりしていますが、有料老人ホームはそこまではいかない」
浜田「夜、職員一人で見きれるのかな」
結城「だいたい1人で20~25人を見ますが、認知症は徘徊しないよう、夜起きないようにするなどケアが大事になります。ここではそれが不十分だったの かどうか」
羽鳥「徘徊するよりは、鍵をかけた方が、と思ってしまいます」
結城「圧迫感を与えるのでそれはしないですね。しかし、態勢がどうだったかは検証する必要があります」
別の老人ホームの話では、認知症には必ず「兆候」があり、症状はそれぞれ違うので、個々に対応するのだという。これは家庭での介護にも通ずることだ。
結城「兆候はまず家族がわかりますから、すぐ専門の人に相談することですね。食べ物でないものを口に入れる、食べたことを忘れる、急に興奮状態になるなどです」
羽鳥「他人事ではないです」