75歳の資産家の女性がオレオレ詐欺に2度にわたって計1億円を騙し取られる事件があった。東京・練馬区に住む女性の自宅に今月8日(2015年12月)、42歳になる息子を装った男から1本の電話がかかってきた。「もしもしオレだけど、最近、うちに無言電話がかかってくるんだけど、そっちは大丈夫?」とはじめは何気ない会話だった。
女性は声が息子に似ていたためにすっかり信じて応対すると、男はすかさず「会社の監査があって2000万円足りないんだよ。金曜日には返すから何とかしてくれないか」と言い出した。女性は息子を助けたい一心で翌日に現金を持って男が指定した地下鉄・有楽町線の要町駅近くに向かい、息子の同僚を名乗る男に2000万円を渡した。ところが、これで終わらなかった。
注意喚起されていながらなぜ騙されるのか?
詐欺と気づかず自宅に戻った女性の元に再び息子を装う男から電話があった。「もしもしオレだけど、いろいろ調べた結果、2000万円では足りないんだ。あと8000万円貸してほしい」といわれ、同じ場所でまた同僚を名乗る男に8000万を手渡した。
帰宅した夫にこの話をして、ようやく不審に気付き息子に連絡したところだまされたことが分かった。女性は電話の男から「会議で忙しいので電話はかけないで」と言われていたため、息子に確認の電話をしなかった。現金を受け取りに来た男は30~35歳で、黒っぽいスーツに白のワイシャツを着ていたという。
このオレオレ詐欺は手が込んでいるが、従来からよくある手口だ。これだけ事件は報じられ、注意が呼びかけられているのなぜ引っかかってしまうのか。タレントの松嶋尚美は「オレオレ詐欺ってもう何年やっているんですか。子どもがいくら会議で忙しいと言ってもおかしいですよ。悲しいよね、腹立ってくるよ」という。
内科医のおおたわ史絵「1回しゃべってしまうと、判断が分からなくなるのかも」
司会の加藤浩次「注意喚起はされていても、(実際に電話があると)助けなきゃと思ってしまうのでしょうね」
最近はATM振り込みより現金受け取り
1億円もの大金を電話の会話だけで見ず知らずの男に手渡す感覚は確かに解せないが、オレオレ詐欺に詳しい立正大学の西田公昭教授は最近はさらに巧妙化していると次のように注意を呼び掛けている。「個人情報を調べたうえでターゲットを絞り電話してくるのが増えています。出身校、勤務先、誕生日など情報を蓄えているので、話の辻褄が合うため成り済ましに気付かないんです。かつて多かったATMへの振り込め詐欺は全体の1割足らずで、9割は現金受取型となっています。
しかも、『オレが取りに行く』と信用させ、実際に行ってみると代理人と称する人物が待っているのですが、ここで瞬時の判断を迫られつい渡してしまうことが多いんです。本人以外には絶対に渡さない判断が大事です」