「抱きしめたい」は1990年代半ばにヒットしたMr.Children(ミスチル)の代表曲だが、歌詞がそっくりの歌謡曲が見つかった。歌謡界ではベテランの平浩二が5月(2015年)に出したCD「愛・佐世保」の1曲「ぬくもり」だ。並べてみると、これはもう「盗作」なんてもんじゃない。
作詞家は沢久美「私は60歳超えててミスチル知らない」
「抱きしめたい」は1992年発売で作詞は桜井和寿だ。一方の「ぬくもり」は作詞・沢久美で、比べてみるとこんな具合だ。
【抱きしめたい】
出会った日と 同じように 霧雨けむる 静かな夜
目を閉じれば 浮かんでくる あの日のままの二人
【ぬくもり】
出会った日と 同じように 霧雨の降る かがやく夜
目を閉じれば 浮かんでくる あの日のままの二人
このほかも、漢字がひらがなになったり、テニオハを変えたり、後のほうのフレーズを前に持ってきたりといった具合で、全体の7割が同じだった。
街で聞いてみると、「やばい、同じだ」「プロとして度胸がありますね。ここまで同じ詞を使うとは」などなど。そりゃそうだろう。盗作だってもうちょっと控え目にやる。ジャンルが違うからだろうか、半年以上だれも気づかなかった。それが今月(2015年12月)に入って、ネットで「そっくりだねえ」というささやきが広がった。
一番ショックを受けたのは平らしい。デビュー45年を記念して自ら作詞・作曲した曲を出し、「ぬくもり」はそのカップリング曲だ。沢久美から詞の提供を受けたのはこれが初めてだったという。関係者は「ショックを受けていましたよ。正統派で過ごしてきたからね」と話す。知ったときには座り込んでしまったそうだ。
沢は歌手から作詞家になった人で、事務所は三鷹市にある。「モーニングショー」が沢の事務所を訪ねたが、応答はなかった。「デーリースポーツ」紙によると、沢は「私は60歳を超えていて、ミスチルもよく知らないし、『抱きしめたい』はまったく知らない」と盗作を否定している。
ジャンルとメロディー違うと気付かれない?
リポートする野上慎平アナが、2つの曲の歌詞を並べたボードを前に「たしかにそっくりです」という。
司会の羽鳥慎一「そっくりの領域を超えてる気がしますがね」
宇賀なつみキャスター「よく気づきましたね。ちょっと聞いたくらいではわからないですよ」
羽鳥「そうそう、別の詞のように聞こえる」
野上「あの曲だけを聴いていたら、『抱きしめたい』に似てるとは気づかないかもしれないですね」
石原良純(タレント)「平さんは知ってるけど、ショックでしょうね」
CDは自主回収を始めたという。
羽鳥「(盗作と)認めたということですか」
なぜこんなことが起こったのか。ジャンルが違うので油断したのか、弟子が詞を書いて師匠の名で出すことはよくあるのだという。弁護士の大澤孝征氏は「告訴されなければ事件にはならないだろうが、民事的な責任はあります」
平浩二、気の毒に。