厚生労働省を名乗る不審な電話がかかったという問い合わせが全国で相次いでいる。音声はどうやら合成で、ガイダンスに従っていると「銀行口座の番号」が求められる。新手の詐欺のようだが、「モーニングショー」が追いかけた。
電話は「050」で始まる番号からかかってきて、着信履歴が残る。折り返しかけると自動応答システムにつながる。音声はまず「厚生労働省地域振興課、臨時福祉給付金自動受付センターです」と名乗り、「あなたは臨時給付金の対象です。給付金は総額97万4000円となります」と続く。さらに「本日、ガイダンスに沿ってご対応いただけない場合は、まことに申し訳ございませんが、臨時給付金は失効とさせていただきます」と念が入っている。
そして、「臨時給付金」を希望する場合は数字の「1」を押すよう促し、応ずるとインターネットのアドレスがショートメールで送られてくる。これにアクセスすると、「振込先の口座番号を入力してください」と「銀行の口座番号」を求められる寸法だ。
無料ソフト使ってガイダンス作成
厚労省は消費税率の引き上げによる影響を緩和するため、「臨時給付金」を支給するとしている。電話はこれを「先取り」したものらしいが、厚労省には「地域振興課」という組織はない。「臨時給付金で電話案内することはない」と注意を喚起している。
音声を専門家が分析したところ、完全な合成とわかった。留守電や自動応答ガイダンスに使うために、合成の音声を作るソフトがネット上で無料公開されていた。提供する会社は「詐欺に使われたとしたら残念。デモ音声は簡単にできてしまうので、使う人の良心に委ねるしかない」という。
同じようなサービスは有料、無料でいくつもあり、「モーニングショー」のスタッフが試みると、簡単に留守電が設定できた。つまり、だれでも簡単につくれて、防ぎようもないということだ。
司会の羽鳥慎一「厚労省は電話で案内することはないといってます。気をつけていただきたい」
「詐欺リスト」「押し貸し」「送り付け」に悪用
一連の電話がインチキなのは明白になったが、わからないのが狙いだ。
羽鳥「口座を聞き出すだけなんですね」
宇賀なつみキャスター「そうなんです。だから直接的な被害はないと思ってしまうんですが、どんな危険があるのでしょう」
ジャーナリストの多田文明氏は「着信に折り返して、しかもその先にまでたどるのは騙されやすい人ということです。そのリストづくりが第一」という。
「押し貸し」の可能性もある。ヤミ金が口座に一方的に金を振り込んで、高利を要求するというものだ。健康食品などの「送りつけ」もある。一番怖いのは、振り込め詐欺の口座に利用されることだという。警察などを騙って口座番号を伝え、「あなたの口座ですね。詐欺に使われたので凍結します」と脅すとか、さまざまな悪用が考えられるという。
菅野朋子(弁護士)「振り込め詐欺はだいたい他人名義の口座を使っています。だから、知らぬ間に犯罪に巻き込まれる可能性がありますね」
件の電話番号はきのうには「使われておりません」となっていた。