世界の物理学者は日本を目指す!宇宙の成り立ち論争リードするノーベル賞師弟

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   ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章さんは2002年受賞の小柴昌俊さんの弟子である。受賞テーマも同じニュートリノの研究で、小柴さんから続く日本のチームが、世界の論争をリードしている。

   ニュートリノは最小の素粒子のひとつで、宇宙から飛来してあらゆる物質を通り抜ける。梶田さんはそのニュートリノに質量があることを発見した。グラムで小数点の下にゼロが31並び、32ケタ目に1が来る重さだが、物理学の常識をひっくり返す大発見だった。従来、宇宙の成り立ちを説明したのは「標準理論」だった。わずか3行の数式だが、ニュートリノには質量がないという前提の理論だ。ニュートリノに質量があるとなると、新しい統一理論が必要になる。いま世界中の物理学者がこれに挑んでいるところなのだ。

常識ひっくり返した小柴・戸塚・梶田チーム「ニュートリノには重さがある」

   そもそもが小柴さんとの出会いだった。小柴さんは岐阜・神岡の観測施設「カミオカンデ」を砦に、素粒子観測の最先端にいた。鉱山跡の地下1000メートルに3000トンの水に沈めた高感度の光センサーでニュートリノをつかまえていた。世界でここだけの施設だ。

   「小柴さんは常に、研究の卵(アイデア)を持ちなさいと言い続けて、独創性を大事にしていた」と梶田さんはいう。その小柴さんのもとで観測を続けていた88年、不思議な現象に気づいた。ニュートリノはあらゆる方向から均等に来ると思われていたが、地球の裏側からくる数が少なかったのだ。

   梶田さんは大胆な仮説を立てた。「地球を通り抜ける間に観測できない形に変わるものがあるのではないか」。ただし、ニュートリノに質量がなければ成り立たない。常識に外れる。1年かけて発表した論文に世界の物理学者の反応は冷たかった。

   しかし、小柴さんはこの独創性を高く評価した。小柴さんを引き継いだ戸塚洋二さんも大きな可能性を感じていた。戸塚さんは95年に「質量があるのではないか。新しい物理法則が関与している可能性がある」と話していた。

   そして、大きさもセンサーの数も10倍という「スーパーカミオカンデ」が完成してデータがそろった。梶田さんは98年のニュートリノ国際会議で発表した。「ニュートリノが質量をもつことを示す強い証拠を得たと断言します」。世界が驚いた。

   だが、2001年11月、水圧でセンサーが壊れた。6割に当たる8600個が失われた。「ショックでした」「これで終わりかと思った」と梶田さんらはいう。だれもが呆然自失のなかで、トップの戸塚さんは翌日、世界に向けて「復活させる」と宣言した。チームワークで、わずか1年で再開にこぎつけ た。

   「今があるのはトップ(戸塚さん)のお陰」と梶田さんはいう。だが戸塚さんは08年に大腸がんで逝く。それから7年、ノーベル賞受賞の知らせに、梶田さんは何度も戸塚さんの名を口にした。

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