血液製剤やワクチンの有力メーカーの一般財団法人「化学及血清療法研究所」(化血研・熊本市)が、国の承認と異なる方法で製品を作っていた問題で、化血研はきのう2日(2015年12月)、第三者委委員会の報告書を公表した。不正は40年も前から行われていて、ニセの製造記録まで作って隠蔽していた。ただ、製品による重大な副作用の報告はないという。
薬害エイズでも汚染血液製剤
化血研はワクチンのシェアでインフルエンザ29%、ポリオ64.2%、日本脳炎36.2%、B型肝炎79.9%という有力メーカーだ。インフルは他のメーカーが3社あるが、そのほかのワクチンはライバルはそれぞれ1社しかない。血液製剤によるエイズ薬害訴訟(1996年に和解)の当事者の1つでもあった。
問題が明るみに出たのは5月にあった内部告発だった。国が承認していない方法で製造を始めたのは74年からで、製造記録を2通作り、紙を古く見せるために紫外線を当てることまでしていた。第三者委は「常軌を逸した隠蔽」としている。
宮本誠二理事長は「今回の報告で初めて知った」「危険があるという認識はなかった」「安全性に問題はない」などと答えたが、「なぜ安全だといえるのか」と聞かれると、長い沈黙のあと、「申し訳ありません。十分なお答えができません」
化血研は宮本理事長以下理事9人全員の辞任・辞職を発表した。
予防接種のメーカー選べないの?
司会の羽鳥慎一「血液製剤で40年間不正な製造をしていたメーカーが、インフルエンザ・ワクチンの3割を作っているんですよね。インフルエンザとB肝炎は大丈夫と言っているが、本当に大丈夫なのでしょうか」
川崎医科大の沖本二郎教授は「薬剤の判定はまず臨床効果があるか(効くか)、副反応(副作用)があるかどうかを見るのですが、発表では他のメーカーのものと差がないので、大丈夫だといわざるをえない」という。
玉川徹(テレビ朝日ディレクター)「文書を偽造していた会社なんて信用できないじゃないですか」
高木美保(タレント)「会社に利益のあることは大丈夫ですといい、なぜやったのかという問いには自分には責任はないという。典型的な責任逃れの答えですよ。10年前、20年前と隠蔽体質は変わってないんじゃないですか」
取材した岡安弥生レポーターは「インフルエンザ・ワクチンでは製造方法に不正はなかったようですが、製造記録に不正がありました。血液製剤は両方不正」という。
羽鳥「(インフルエンザ製造で)本当に不正がなかったのかと思っちゃう」
沖本教授「言えるのは、副反応が特別に出てはいないということ。医療機関で毎年調べてるから、これは確かです」
羽鳥「メーカーの数が少ないのはなぜなんですか」
沖本教授「昔はたくさんあったのですが、ワクチンの効果が疑われて使われない時期があって、この間に多くが撤退しました。むしろ、これらは頑張っていてくれたわけですが、ワクチンが見直されたのは10数年前からです」
羽鳥「化血研にも頼らざるを得ないというわけですね」
沖本教授「この冬に間に合わなくなる」
玉川「消費者は拒否できる。他社ががんばってつくればいい」
第三者委は「研究者のおごりがあった」とも指摘している。「自分たちは専門家で、当局よりよく知っている」という意識だ。原子力でもあった。建築偽装でもあった。役所がなめられている。内部告発がなければわからなかった。