埼玉・深谷市の利根川でおととい22日(2015年11月)朝、「人が流れている」という通報で警察・消防がかけつけ、2人の死亡が確認され、川の中で泣いている女性が保護された。女性の話から、介護疲れと生活苦から高齢の両親と心中をはかったものとみられる。女性は殺人と自殺幇助の容疑で逮捕された。
母親は認知症。月収18万円の新聞配達も体調悪く退職
女性は波方敦子(47)で、21日夜から翌早朝にかけて軽自動車を流れに乗り入れ、母の藤田ヨキさん(81)、父の慶秀さん(74)と水の中に入ったという。「車が途中で止まったので、3人で歩いて川の深い方に進んだ」という。
河原には車の深い轍が刻まれており、車が止まったのは流れに5メートルほど入ったところで、水深はひざくらいまでだった。3人は川の中央部へ歩いていったらしい。車から2キロ下流にヨキさん、近くの浅瀬で慶秀さんがいずれも死亡しているのがみつかった。
3人は、車がみつかった場所から2キロほどのところに住んでいた。ヨキさんは10年ほど前から認知症になり、三女である波方が介護していた。近所の人の話では、波方はやさしく穏やかな性格で親孝行で知られており、本人も「死ぬまで面倒をみる」といっていた。ただ、このところ「(介護が)大変なんだよ」と疲れた様子だったという。
一家は慶秀さんの新聞配達で生計を立てていたが、月収は18万円ほど。体調を崩してそれも今月12日で退職していた。勤め先は「脊髄かなんかが悪く、しびれが出るといっていた」と話す。波方は警察に「母親の介護に疲れた。貯金も収入もなくなり、父から『一緒に死のう』といわれた」と話しているという。一家は生活保護を受けていなかった。
「介護疲れ殺人」わかっているだけで年間50件
波方の逮捕容疑は、母親に対する殺人と父親の自殺を幇助したということになる。認知症の母の手を引いて水に入るのがどんな気持ちかなんて、法律は斟酌しない。生き残ったからいけないと言わんばかり。報道も逮捕された者は機械的に「容疑者」だ。
野村修也(弁護士)「警察庁によると、介護疲れによる殺人は年間50件。動機がはっきりしたものだけだから、実際はもっと多いともいわれます。在宅の老老介護の場合は、ご近所のネットワークをどう作っていくのか、もう一度考え直す必要があります」
司会の夏目三久「介護をする、されるはすべての人が経験するだろうことです。今回のような事例は、自分に置き換え、人ごととは思わず、重く受け止めなければ いけませんね」
ことはそんなきれいごとでは済まなくなっている。とくに都会では。きのうも江東区の都営住宅で、81歳の男性と71歳の妹が死んでいるのが見つかった。近所つきあいもなく、そういえば1か月半ほど姿を見なかったなぁと。なにが「1億総活力」だ。