<おかしの家>(TBS系)
オダギリジョー、八千草薫・・・抱きしめたくなる愛おしさ!東京の下町・寂れた駄菓子屋の普通の人々

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   おばあちゃんの形見の小さい風呂敷に包んで、戸棚の奥にしまっておきたいような作品だ。ときどき取り出して開けると、中には細かく砕かれてキラキラ光るキャンディが入っていて、色とりどりのその小さい粒を、1粒ずつ指先につけてなめるのだ。

   「おかしの家」といっても、童話に出てくるお菓子でできた家のことではない。お菓子の家は、子供のころに絵本で見て「食べちゃったら崩れちゃうのに。家がなくなっちゃったらどうするんだろう」と、憧れよりも心配になった記憶がある。

   で、こっちの「おかしの家」は、東京・下町にある寂れた駄菓子屋「さくらや」のことである。いまや数少なくなった子供たちは、「さくらや」の店先を「コンビニ行こうぜ」と叫びながら走り抜けていくのが現状だ。

   切り盛りしているのは、おばあちゃん(八千草薫)と33歳になる孫の太郎(オダギリジョー)だが、つぶれる寸前というか、もうすでにつぶれている。なにせ、「売り上げは月に4万円程度。諸経費を引くと儲けは・・・恥ずかしくて言えない」(太郎)ありさまなのだから。そこで太郎が夜間工事のバイトに出てなんとか暮らしているのである。

「おとなだろう、勇気を出せよ」忌野清志郎の主題歌これまた泣ける

   おばあちゃんは太郎に苦労させたくないから、店を閉めて家を売ろうと言うが、太郎は閉めたくない。幼い時に両親を亡くした太郎を、おじいちゃん、おばあちゃんが育ててくれた店だからだ。それに、なんだかこの店が必要な気もするのである。

   近所には、太郎の小学校の同級生で脚本家志望の弘樹(勝地涼)や、後輩で精神不調の剛(前野朋哉)、暇をもてあます風呂屋の島崎(嶋田久作)がいて、毎日「さくらや」に入り浸っている。店の裏が狭い庭になっていて、転がっている壊れたベンチや空き箱にだらしなく腰掛けて、いい大人がチューブ入りのゼリー菓子や「うまい棒」(とうもろこし菓子―これはうまいぞ。私はオトナ買いしている)を食べながら、うだうだ、どうでもいい話ばかりしているのである。

   この庭はいい。錆びたリヤカーがブロック塀に立てかけてあって、古い洗濯機が置いてある。壊れたゲーム機の足元には泥だらけのサッカーボールが転がって、隙間には雑草が生えている。見ようによっては汚らしいかもしれないが、どこにもある自然な風景である。荒廃した感じがしないのは、紙くずやペットボトルが散乱していないからだ。一方には狭い水路が流れていて、暑い日には並んで腰かけ、足を浸しながらダベるのも羨ましいなあ。

   太郎はおばあちゃん孝行のえらい孫、ではあるのだが、実は週に1度はフーゾクに行き、バイトの給料の半分以上を使ってしまっているダメ男でもある。もちろん、おばあちゃんには言えない。そんな日常に、離婚してシングルマザーになった同級生・礼子(尾野真千子)が加わって、太郎と心通わせる展開になっていく。

   八千草薫、オダギリジョーはじめ、俳優たちみんな、まとめて抱きしめたいほどいい。さすが注目の石井裕也(脚本・監督)だ。最後に流れる主題歌「空がまた暗くなる」の忌野清志郎の声が沁みる。「おとなだろう、勇気を出せよ」と歌っている。(水曜日深夜11時53分)

(カモノ・ハシ)

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