安倍首相が「早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能にする」とぶち上げたが、実現性はどうなのか。すでに離島輸送の実験は行われている。香川県は今年(2015年)1月、高松港から8キロ離れた男木島まで重さ1キロの荷物を瀬戸内海の上空55メートルで飛ばし、およそ20分で無事に目的地に到着した。
高齢者の身の回りの手伝いをしている会社「MIYAKAWA21」は今年4月、徳島県神山町の山間部に住むお婆ちゃんに「おはぎ」を届ける実験を行い、こちらも成功させている。周辺のスーパーやコンビニに行くまで車でも20分かかる地域だったため、「おじいちゃん、おばあちゃんからはドローン宅配が使える時代まで長生きできて良かったと喜んでもらえました」(鯉渕美穂社長)という。
アメリカが戦争始めると誤差頻発の日本GPS
司会の加藤浩次「こういう新しい技術が出てきたときは、『ええ、大丈夫かな』って思ってしまいますけど、まだハードルはいろいろありそうですね」
東京大学の鈴木真二教授はドローン宅配実用化には3つのハードルがあるという。一つはGPSの精度向上だ。現在のGPSは2010年にJAXAが打ち上げた人工衛星「みちびき」によって誤差を10センチ程度まで縮めることに成功している。しかし、その精度を24時間維持するためには、同じような人工衛星が4機必要で、すべて揃うのは2019年ぐらいになるという。
上念司(経済評論家)「これね、本当は7機必要なんです。アメリカが戦争して軍の使用が増えると、日本向けのパワーが落ちてしまうからです。アフガン戦争みたいなことがあると、日本の宅配がズレちゃうなんていうことになりかねません」
私有地上空は勝手に飛べない
2つ目はバッテリーの性能向上だ。いまは2キロの荷物を運べるのはせいぜい8キロまでである。片道4キロしか飛べないので、バッテリーの開発が急務ということになる。
森圭介アナ「荷物が重くなればなるほどバッテリーも大きくしなければならないということですね。そうすると全体の重量はさらに重くなってしまうというジレンマがあります」
3つ目の課題が安全性の追求だ。実証実験を繰り返す必要があるため、「3年以内は難しいのでは」と鈴木教授は言う。
加藤「法的な問題はどうなんでしょうか」
菊池幸夫(弁護士)「たとえば、飛行ルートに私有地があったら、その上を飛べるのか。土地の所有権というのは上空にも及びます。そこを通るとなると、俺んち通るなということにもなるわけです。じゃあ、道路の上を通るのか。これも問題があって、現在、道路は道路交通法が適用されてますが、空中を通る場合も左側通行しなければならないのか。課題は山ほどあると思います」
安倍首相の言う「3年後」は無理だね。宅配業界へのリップサービスかな。