妊娠や出産を理由に不利益な扱いや嫌がらせをする「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」の実態を厚生労働省が初めて調査した。対象としたのは産業や規模別に選んだ6500社で働く25~44歳の女性で、9~10月(2015年)に行われた。
マタハラを経験したのは、正社員で21.8%、契約社員などで13.3%、派遣社員では48.7%もあった。派遣社員では27.4%が契約打ち切りなどになっていた。
会社上司「前例がない。前例作るつもりもない」
法律では、非正規社員の育児休業は「子どもが1歳になった以降も雇用が続くことが見込まれる」という条件がある。雇用が続かなければ終わりということだ。
マタハラ対策ネットの小酒部さやか代表は「非正規は育休が取れないと企業側が思い込んでいるんです。だから、妊娠した時点で『辞めれば』となる」「育児に対応できるような働き方を企業が受け止めない限り、いつも人を切っていくことになる」と話す。
2人の子どもを持つ主婦(39)は、派遣社員をしていた5年前、派遣元の会社に育児休業について相談したところ、就業規則を理由に「休業は取れない」といわれた。「就業規則より法律の方が強くないですか」というと、幹部は「前例がないし、前例を作るつもりもない」と開き直った。言い返す気力もなくなったという。結局、「雇い止め」になった。
マタハラにあったときの子どもは5歳になった。いまは「もっと闘っておけばよかった」と思っている。「このままだと子どもは多分増えない」
安心して子どもが産める国ではないということだ。
加害者に多い「同僚・部下の女性」
調査では、マタハラの加害者がだれであったかも聞いていた。直属の上司・男性が19.1%、直属の上司・女性が11.1%、役員など男性15.2%、同女性5.7%、同僚・部下では男性5.4%に対して女性9.5%と女性の方が多かった。
牧嶋博子(TBS解説委員)「同僚・部下で女性の方が多いのは、あなたのせいでわたしの仕事が増えたという不満なんです。会社としてきちんと対応しないとマタハラは減らないと思います」
厚労省はマタハラ防止に向けて、政府の助成など育児休業をとりやすくする法改正を検討しているという。いまごろとは暢気な話だ。子育てと雇用の安心を確立したフランスが出生率をあげたのは何十年も前のことだ。