三重県四日市市にあるお年寄りのためのサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で先月(2015年10月)、突然入居者22人全員が退去させられた。運営会社が廃業したので1か月以内に出ろというのだ。しかし、地元自治体は何の手も打とうとしなかった。
困ったスタッフが市に相談!ところが・・・「県の管轄。そっちに言え」
このサ高住は入居の初期費用が敷金と契約手数料で済むため、年金が少ない人でも入りやすい。バリアフリーで食堂や談話室もあり、外部業者の介護サービスも受けられるので評判はよかったという。そこに、先月末までの退去を求めて、「廃業のお知らせ」と題する文書がつきつけられた。
介護スタッフの女性は「皆さん、アパートを引き払って来たので戻る所のない人がほとんどでした」と話す。このスタッフも事前に知らされていなかった。文書に書かれた理由は「諸般の事情」とあるだけ。運営会社の社長に問い合せようにも連絡がとれず、スタッフも困惑するばかりだった。
運営会社の元役員は「担当者が辞めたので継続できなくなった」と語るが、会社から入居者には何の説明もない。「モーニングショー」の取材では、どうやら経営陣が変わり、新しい社長に福祉のノウハウがなかったため廃業を決めたらしい。
困ったスタッフは四日市市に相談したが、「相談は県に言って」とすげなく断られた。具体的な指示一つなかった。市の担当課長によると「法律上は県が対応と明記されているので、県がまず責任をもってやるべきだ」という理屈だ。地元の弱い市民が切羽詰まっているのに、「管轄外だからあっちへ行け」とは、いまどき珍しいほど冷たい市役所があったものだ。
市役所に任せても何も解決しないと考えたスタッフは、知り合いの施設に声をかけて受け入れ先を探し、全員転居にこぎつけたのは先月30日の期限ぎりぎりだった。
サ高住は賃貸住宅!福祉施設とは違う・・・安すぎる家賃は要注意
淑徳大学の結城康博教授は「福祉施設ではないので会社側に住まいを探す責任はないが、施設との見分けはわかりにくいですよ。2011年にサ高住が初めてできたときには、廃業を想定していなかったんです」と話す。
司会の羽鳥慎一「一生をそこでという人もいらしたはずです。ビジネスとしてだけでとらえられています。行政の対応もこれでいいのですかね」
結城教授は「市民が入居しているのだから、福祉的な施策をとるのが責任だと思います」としたうえで、サ高住は公的サービスではない点を指摘し、「相場より安いサ高住には注意する方がいい」と呼びかける。サ高住は増え続けて、14年5月には全国で4626棟、14万8632戸にのぼる。
羽鳥「どなたでも身近に起こりえる問題です」
勝手な業者、冷たすぎる行政。ひどい話だ。