日本酒ブーム支える若手「蔵元杜氏」Y・K・35脱却して個性豊かな味と香り追求

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   日本酒がブームだ。香り高い甘酸っぱい味や低アルコールの発泡タイプなど多彩な日本酒が登場している。酒のつまみも多様化していて、ラーメンあり、エスニックありで、20代、30代の若者たちが新たなブームを作り出している。

   背景には何があるのか。「Y」「K」「35」の崩壊だ。「Y」は山田錦という酒米の、「K」は熊本酵母、「35」は玄米の表層部をどれだけ削ったかという割合を示す精米歩合が35%のことだ。玄米を65%ほど削ったあたりがちょうどいい頃合いとされていて、この3つがそろえれば、「おいしい酒ができる」と考えられてきた。

   ところが、酒造業界がこの定説にこだわるあまり、似たような酒が溢れる状況になってしまった。その弊害を破ろうと、各地の蔵元(酒造会社)が独自の酒つくりを模索し個性豊かな日本酒が登場しているというわけである。

酒つくりのベテラン職人が減少

   江戸時代からつい最近まで、酒造りを担ってきたのは、実は蔵元ではなく杜氏だった。本業は農業だが、農閑期になると蔵元に『出稼ぎ』に来て酒を仕込む人のことで、リーダー格の杜氏が同じ村の若者たちを引き連れ、蔵元も仕込みに口出しはできなかったとされる。

   若手蔵元を育成している醸造学の専門家・東京農業大学醸造科学科の穂坂賢さん教授)はこう話す。「しかし、杜氏制度の存続が厳しくなっていて、酒の消費も減っています。こうした事態を目のあたりにした若い世代が(杜氏制度に頼らず)自分たちの酒を造ろうとしたことが大きいと思います」

   水戸部朝信さんは東京の総合商社を15年前に辞め、山形で家業の蔵元を継いだ。杜氏に頼ることができなくなったため、蔵元自らが杜氏を務める「蔵元杜氏」となって、これまでの酒造りを根本から見直した。消費者が求める味を徹底的に追求して、米や水なども地元産を使い経営を軌道に乗せた。日本酒にワインの醸造技術である「マロラクティック発酵」を取り入れ、低アルコールでまろやかな味を実現した。

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