「町内会」もういらない?転入住民は未加入、役員たちは「仕事多くてしんどい」

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   ゴミ集積所の管理や防犯パトロールなど、地域でさまざまな役割を担ってきた町内会が岐路に立たされている。脱会を申し入れるとゴミ出し禁止にされるなどの騒ぎまで起きている。背景には、会員の高齢化、マンション住民の加入率低下などが原因にある。本来は行政がやるべき仕事を町内会が引き受け業務が増加してさばき切れなくなっている実情も重なっている。

   国谷裕子キャスターによると、「町内会は一定区域で居住者が任意で加入し、地域の問題に自主的に取り組む日本ならではの組織」だ。戦時中の隣組は終戦とともにGHQによって解体させられたが、その後、町内会として復活し、いまは全国に30万あると言われている。

   その役割は、回覧板の作成、地域の清掃、防犯・防災パトロール、ゴミ集積所の管理、雪かき、行政との交渉と多岐にわたっている。東日本大震災以降は住民の命と生活を守る組織として改めて強化し直す動きもあるという。

   ところが、会員の高齢化や町内会への加入率の低下で、運営する担い手の不足が深刻化し、組織の弱体化、形骸化が進んでいる。

妻と二人で3時間かかって市広報誌配布

   4000人の住民が住む北九州市西戸畑地区の町内会は、年々加入者が減少し先細り状態にある。野口勝義さん(71)が会長を引き受けたのは6年前だが、以来、自由な時間はほとんどない。朝起きると市役所から頼まれた広報誌を妻と2人で3時間かけ1軒ずつ配達する。一人暮らしの高齢者に異変がないかを確認するのも大事な仕事だ。それが終わると、ゴミ集積所の管理・清掃がある。

   町内会に加入しない住民が増え、ルール無視のケースが目立ってきた。乱雑なゴミの出し方で散乱したゴミを清掃するのも野口さんということになる。加えて行政から委託される仕事は増えるばかり。ついグチも出てしまう。「(未加入住民は)自分たちが何もしなくても誰かがやってくれるだろう。それじゃ困るんです」

   栃木・宇都宮市郊外の住宅街の町内会は膨れ上がる業務に悲鳴を上げ、昨年(2014年)、町内会から1度に8世帯も脱会する事態が起きた。いずれも70代を超える高齢者世帯だった。町内会の役員になると、さまざまな会合や花見など1年間60件に上る行事への参加が義務づけられ、とても手におえないというのだ。

   脱会したある主婦は、「認知症の家族を抱えていたり、夜間の仕事で昼夜逆転の生活を余儀なくされたりで、とても町内会役員の仕事を引き受けることはできなかったのです」と話す。そこで主婦ら脱会組は「町内会費を払うので役員の仕事を免除してほしい」と申し入れたが、難色を示され、やむなく脱会した。

   すると、町内会によって脱会した住民が住む周辺の防犯灯(電気代は町内会費)はすべて撤去され、ゴミ集積所の使用を禁止すると伝えてきた。まるで昔の『村八分』を連想させるが、市は「脱会した住民側が町内会に戻るのが望ましい」とまるで他人事で、積極的に問題解決に介入する姿勢はない。

   町内会が抱える問題を調査している首都大学東京の玉野和志教授は、「ちょっと極端だと思いますね。全体の仕事が増えているのが問題です。本来、行政がやるべき仕事なので、事情がある人が抜けてもやっていけるぐらいの仕事に留めるべきで、住民同士が争う必要はないと思う」と話す。

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