自誌批判も掲載する「週刊ポスト」の矜持!元少年A実名記事に大塚英志「正しい判断といえるか」
安倍首相のお友達、作家の百田尚樹氏もこのところ下り坂のようである。こんな記事が10月28日付の朝日新聞に載っていた。<タレントで歌手のやしきたかじんさん(昨年1月死去)の闘病生活を描いた作家・百田尚樹氏の著作「殉愛」をめぐり、たかじんさんの元マネジャーの男性が28日(2015年10月)、発行元の幻冬舎と百田氏に1100万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
訴状によると、男性はたかじんさんの事務所の帳簿を操作したり、たかじんさんの妻に暴言を吐いたりする人物として描かれたと主張。こうした記述は事実と異なり、社会的評価を低下させられて名誉を傷つけられたと主張している>
この件とは別だが、MARUZEN&ジュンク堂書店・渋谷店が「自由と民主主義のための必読書」フェアを開催したところ、ツイッターで「選書が偏向している」と批判が出たため、詫びて棚を撤去してしまったのは残念だった。
書店にはさまざまな意見を持った著者の本が並んでいる。嫌韓や嫌中の本が積み上げられていても、それに異を唱える人はほとんどいまい。お前の意見には絶対反対だが、意見を述べる権利は認めようというのが民主主義であるはずだ。
フェアに並べられていたのは、「SEALDs」、作家の高橋源一郎の「民主主義ってなんだ?」、ニューヨークのウォール街占拠デモを紹介した「私たちは『99%』だ――ドキュメント ウォール街を占拠せよ」などだったそうである。これが偏向しているというのは安倍首相とその取り巻きのネトウヨたちであろう。MARUZEN&ジュンク堂書店は言論・表現の自由を守れなかったのだ。
ついでに触れておくと、『週刊ポスト』の「BookReview」欄で大塚英志氏が、少し前に週刊ポストが「元少年A」の実名を出したことを批判している。改名前の実名を報道することはグレイゾーンだが、<その曖昧さの中で法の運用をメディアが恣意的に解釈することは正しいのか>と批判し、<掲載理由を同誌は「公衆の正当な関心の対象」>としたことが、それ以上に引っかかると難じ、大塚氏は「元少年A」の実名報道は見出しを含めて読者の「好奇心」に応えたものだと書いている。
大塚氏がいっていることの当否はともかく、こうした自誌への批判もそのまま載せる週刊ポストの姿勢を私は買う。