中国が36年間続けたてきた「1人っ子政策」を終わらせることになった。「5中全会」(中央委員会第5次全体会議)で「廃止」が決まり、子どもを2人まで認めることになった。深刻な社会の高齢化があるとみられるが、国民の現実は1人っ子を育てるだけでもやっとという窮状だ。
北京市民「もう1人は欲しくない」「病気や学校など高すぎる」
1人っ子政策は急激な人口増を抑えるため、改革開放政策さなかの1979年に導入された。その結果、男性を中心と考える中国社会では女児の中絶が広く行われ、男女の比率が偏るなどさまざまな歪みをひきおこした。また、世界でも例のない早さで少子高齢化が進み、2012年には15~59歳の労働人口が初めて減少に転じ、経済成長にも悪影響が及ぶと意識されるにいたった。
政府は13年から「両親のどちらかが1人っ子」の場合に限り、「第2子」を認めるとしたが、14年には出生人口がわずか47万人増という危機的な事態になっていた。
中国問題にくわしい富坂聰・拓殖大教授は「一番大きいのは社会保障です。生産年齢人口が減っていくので、労働者を増やして高齢者を減らさないといけない。ところが、1人っ子政策のクスリが効きすぎて、出生率が上がらないんです。そこで手を打ったということですね」という。
この決定をどう思うかを北京の市民に聞くと、「もう1人は欲しくない」「病気や学校など高すぎる」という答えだった。
急速に進む少子高齢化。4億人が65歳以上
司会の夏目三久が北京支局の嶌暢大記者に「市民の反応はどうですか」と聞いた。「大都市では家賃や物価も高く、2人目は相当な負担になります。1人っ子政策で根付いた生活スタイルは、1人にお金をかけて育てるという価値観で、 これを変えるのは簡単ではありません。また、共働きが普通なので、家計にも影響します」
夏目「政府の狙いはどこにあるでしょうか」
嶌「高齢化が進めば介護など社会保障の破綻が懸念されます。経済の減速も鮮明になって、不満が政府に向くのを避けたいという判断があるのでしょう」
夏目が出した日本と中国の人口ピラミッドを見ると、ともに若い世代が少なく、高齢世代を養えるか懸念される形になっている。日本に比べると、中国の高齢化はこれからというのがわかる。
龍崎孝(TBS解説委員)「コミュニケが出ているが、今後5年間に相当厳しい状況になるという自覚があるようです」
国連の推計では、2050年に中国の65歳以上の割合は3割を超え、4億人になるとしている。数が大きいから歯車が狂ったらとんでもないことになるが、逆に人口が増えすぎると、それはまた別の脅威にもなる。