旭化成建材の逃げ切り許すな!現場担当者に責任押しつけ・・・北海道でもデータ流用発覚で「会社ぐるみ」歴然

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   三井不動産グループの「傾斜マンション」問題は、現在、他の不動産会社のマンションに住んでいる住民、これからマンションを購入しようとしている人たちにも深刻な影響を与え、寄ると触るとこの話で持ちきりである。

   『週刊文春』は問題の杭打ちをした旭化成建材の担当者(仮にX氏)一人の責任にして、この『事件』を矮小化しようとしていると批判している。X氏は基礎工事の杭が短すぎて支持層と呼ばれる固い地盤に届いていないことを知っていながらデータを改ざんしたといわれているが、ベテラン杭打ち業者は「そんなことは有り得ない」と断言している。

   なぜなら、杭を打つためにドリルで掘削するのだが、支持層の硬い地盤に到達すると大きな反発があるし、運転席に取り付けられた負荷を表すメーターに出るため、素人でも間違えようがないというのだ。旭化成建材の堺正光常務はX氏は「ルーズな人間だなと。事務処理が苦手そうだなと感じた」と話したが、X氏がかつて10年ほど勤めていた会社の経営者はこういっている。

   <「本当に几帳面な大人しい子でね。(中略)責任を持って仕事をやる、手堅い子でしたよ。彼は現場で杭打ちを監視するだけじゃなくて、書類管理もすべてできましたし、旭化成建材へ移っても、問題なくやれたはずです」>

   週刊文春のインタビューに答えて、この経営者も三井や旭化成はX氏一人に責任を被せ責任逃れをしていると思うと答えている。さらに、週刊文春によれば、問題の横浜の現場では、施工主の三井住友建築が発注していた杭がもともと短かったという「事実」が発覚したという。16メートルではなく14メートルだったために、適切な杭の配列ができなかった。再発注すると、検査機関に書類を再提出し1か月ほどかかってしまうため、工期に間に合わないのでデータ流用で処理しようとしたのではないかと、先の杭打ち業者が指摘している。

   やはりというか、北海道庁は10月28日(2015年)、道が発注した工事で旭化成建材が杭の工事データを流用していたと発表したのである。これに関わったのは横浜とは別の担当者であった。

   下請けは元請けの顔色を窺い、孫請けは下請けのいうがままにやらざるを得ないのがこの業界の鉄の掟である。ここにメスを入れないかぎりこうした問題はこれからも必ず起きる。

三井不動産したたかな「住民分断」建て替え合意の困難見越して「カネで解決」

   『週刊現代』はこの問題について、多方面にわたって分厚い取材をしている。まずは現在マンションに住んでいる人間には最大の関心事である旭化成建材がつくった「マンション一覧」から。旭化成建材が過去10年間に杭工事をした全国3040件の内訳は明らかにされたが、そのうちマンション(集合住宅)だけで696件あるそうだ。

   そこで、週刊現代が大手デベロッパーに「緊急アンケート」をした。旭化成建材が杭打ちを担当した物件が過去、現在を含めて「ゼロ」と回答したのは森ビルと森トラストの2社だけ。近鉄不動産、大和ハウス工業、三菱地所レジデンスが「現在販売中」のマンションを購入した人も、不安になる必要はないという。この3社の現在販売中のマンションも旭化成建材が杭打ちに関わった物件は「ゼロ」であるという。

   住友不動産が過去10年に販売した約300の物件のうち、旭化成建材が関わったのは3件ある。住友不動産は当該マンションについてすでに管理組合理事会に連絡済みだというから、連絡が来ていないマンションの住民はセーフだろう。不安なのは回答しないと答えた大京、タカラレーベン、野村不動産である。何か都合の悪いことでもあるのだろうか。

   今回の三井不動産側の対応には問題があるとするのは、企業の危機管理に詳しい経営コンサルタントである。<「今回、三井不動産は住民側に『全棟建て替え』と『高額買い取り』を提示しました。これが非常にしたたかな戦略だと専らの評判なのです。

   一つ目のキモは、『全棟』。傾きが確認された西棟だけではなく、傾きが見られない森棟、中央棟、南棟を含めた全4棟すべてを建て替えるプランが提示されたことで、『4棟の全住民の5分の4』と『各棟の住民の3分の2』の合意が必要になりました。この全棟プランを『三井の誠意ある対応』と報じるメディアもありましたが、本当は合意のハードルが上げられただけなのです」>

   この合意形成には数年を要するというのが専門家たちの読みだという。合意形成に時間がかかるほどに、途中で嫌気がさしてマンションを離れる決断をする住民が出てくることは必至だ。

   <「そういう出ていきたい人たちには、『買い取り』に応じるのが二つ目のキモ。この仕組みだと、最終的にマンションに残るのは『建て替えしたい人』と、『建て替えはしたくないけど住み続けたい人』になるからです。

   この2グループは歩み寄りができないので、住民は分断される。結局、建て替えは合意できないから、西棟の修繕だけはやってくれと住民たちが音を上げる。そんなシナリオに落ち着く公算が高くなるのです。

   では、その修繕費は誰が出すのかというと、旭化成建材が支払うと明言している。となれば、三井不動産の出費は、出ていった住民への補償だけで済まされる。仮に100世帯が出て行けば、買い取り費用は30億円ほど。

   数百億円はかかるとされる建て替え費用に比べれば、ずいぶん少額です」(同)>

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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