2020年の東京オリンピックに向けて、外国人旅行客を受け入れる「民泊」が広がろうとしている。慢性的なホテル不足に備えて、一戸建ての空き家やマンションの空き部屋をホテル代わりに有料で貸し出す新たな宿泊の形だ。
厳密に言えば、民泊は旅館業法に違反しているが、国は東京、大阪、京都など6地域を「国家戦略特区」に指定し、自治体が条例を定めれば民泊を認める方針だ。その第一号として、大阪府は27日(2015年10月)に条例案が成立、これをきっかけに民泊はさらに増えると予想されている。
一方で、民泊は周辺住民から「深夜にどんちゃん騒ぎをされた」「警察沙汰のトラブルがあった」などの苦情も相次いでいる。かつて大手ホテルの社長兼総支配人を務めていた玉井和博さん(立教大学観光学部特任教授)が言う。「民泊と言っても、実は2つスタイルがありまして、一つは『ホームステイ型』です。お客様を家庭がきちっとおもてなしをするというスタイルで、もう一つは急速に広がっている『投資ビジネス型』です。これが旅館業法にマッチしているかが問題です」
家主に無断で又貸しして月80万円
実態を見てみよう。都内の男性は賃貸物件を又貸しすることで利益を得ている。投資ビジネス型だ。マンション8部屋を借りていて、家賃は1部屋月12万円だが、それを1泊1万円ほどで貸していている。ほぼ毎日、宿泊客で埋まるため、家賃や光熱費を支払っても、1部屋で月に10万円ほどの利益になるそうだ。
男性はそれまでの仕事を辞め、民泊だけで稼ぐようになった。ほとんど家主の許可を得ていないが男性は悪びれない。「私がこのビジネスを選んだのはお金の部分は大きい。稼ぎ方に問題があるのかも知れませんが、ニーズがあるところに応えていくのは当然のことと思います」
「ホームステイ型」はどうか。大阪府枚方市の関原一郎さんは仕事を辞めた後、築80年の古民家を改装して民泊として貸し出している。日本ならではの和室や仏壇、庭園などで外国人に喜んでもらおうと考えた。家では母・和子さんが着物姿で出迎えている。
関原さんの民泊を利用したシンガポールの女子大生は、「すばらしいおもてなしでした。また絶対に日本を訪れたい」と話す。関原さんもこう言って胸を張る。「外国人目線だったらどう喜ぶかなと想像しながらやってます。日本にあるセカンドハウスみたいに思ってもらえたら嬉しいです。『セカンドハウス・イン・ジャパン』やな」
「ホームステイ型民泊」で日本の暮し体験
国谷裕子キャスター「お客さんの嬉しそうな表情が印象的でしたね」
玉井教授「民泊という言葉通り、ホストとゲストが情報をやりとりできるということが重要なポイントになってくると思います。逆に言うと、ここがキチッとできれば、ホームステイ型民泊は観光立国である日本にとって非常に有意なスタイルだと思います」
国谷「日本にとって『有意』とはどういうことですか」
玉井教授「観光というのは、その国や地方の日常、たとえば自然だとか食をどうやって体験できるかが重要な要素です。そういう視点から見ると、ホームステイ型民泊はその一つの要素になりえる可能性があります」
国谷「地域との間で摩擦も生まれる中、どうすれば民泊を根付かせることができるでしょう」
玉井教授「都市部と地方では違うでしょうから、その地域、地域でどううまく使っていこうかという『地域社会との共生』が重要だと思います」
ビレッジマン