大阪『女児焼死』釈放の母親「死んだ娘のママよかったねという声が聞こえてきます」

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   大阪・住吉区で1995年に起きた住宅火災で11歳の少女が焼死した事件で、生命保険金目的の放火殺人容疑で無期懲役が確定し、服役していた母親の青木恵子さん(51)と内縁の夫の朴龍晧さん(49)がきのう26日(2015年10月)、再審決定と刑の執行停止で釈放された。足利事件、東電社員殺害事件に次ぐ無罪となるか。いずれも強要された自供だった。

「いくら謝ってもらっても取り返すことはできません。警察・裁判所の責任」

   和歌山刑務所を出た青木さんは「20年目にして当たり前の世界に戻ってくることができました。(死んだ娘の)『ママよかったね』という声が聞こえます」と語った。さらに、「息子との20年の離れた期間は、いくら謝ってもらっても取り返すことはできません。娘の悲しみを普通に味わうことができなかったことは、警察・裁判所の責任」といった。

   会見では、「息子と両親、亡くなった娘に、ママは無実だよと証明するまでは負けられない、死んでも死にきれないと争ってきましたし、1日も早く 『娘殺しの母親』という汚名を晴らしたい。これだけです。私は何もやってないし、無実です」と話した。

   8歳のときに別れた息子はいま29歳になった。きょう27日未明に息子と再会して抱き合った。「息子の手をつかめてうれしい。これから少しづつ失った20年を取り戻したい」

   その息子は母の手の感触を聞かれ、「冷たい」とつぶやいた。

   大分刑務所から釈放された朴さんは、「感無量です。20年ぶりなので、遠い外国の地に立っているようで現実感がありません」

   そして夜、大阪で母親と対面した。笑顔で「苦労かけてごめんね」と声をかけ抱き合った。「おふくろの愛情がこれほど深かったんだと、すごく実感しました」

初めから「保険金殺人で立件方針」現場状況と矛盾する供述強要

   事件は1995年7月に起こった。自宅隣接の車庫に止めてあった車から出火し、入浴中だった青木さんの長女が死亡した。警察は青木さんと朴さんが長女にかけた保険金目的で放火したとして立件した。裁判で2人は終始は起訴事実を否定したが、朴さんの「ガソリンをまいてライターで火をつけた」という警察での供述を根拠に、2006年に最高裁は2人の無期懲役を確定した。

   しかし、弁護団が行った再現実験で供述と合わないことがわかり、09年に再審を請求した。これを受けて検察側も同じ実験をして供述に矛盾があることは判明した。自供通りだと、朴さんは逃げられず、火にまかれてしまうのだ。車からもれたガソリンに風呂釜の火が引火したとみるのが妥当との結論だった。

   大阪高裁は今月23日に再審を決定し刑の執行停止も決めた。大阪高検は最高裁に再審開始に対する特別抗告を検討している。検察はいったい何を守ろうとしているのか。もとはといえば供述調書だ。朴さんは裁判で「警察に強要された」と訴えたが、高裁も最高裁も耳を貸さなかった。その結果の20年。

   野村修也(弁護士)「確定した判決でも、一定の要件を満たす『重大な理由』があれば再審理ができます。判決を受けた者の利益となる証拠が新たに発見されたときなどです」

   龍崎孝(TBS解説委員)「自供はかつては証拠の王様といわれましたが、自供の強要がえん罪に結びつくことがあります。捜査の可視化がいわれていますが、今回の再審決定でその流れが加速されるかもしれません」

   野村「そのとおりで、検察は自供があると、それにふさわしい証拠を集めて、矛盾する証拠を排除する傾向がありました。この事件でも、検察がちゃんと実験をやっておくべきだった」

   司会の夏目三久「検察の特別抗告の期限はあす28日です」

文   ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト
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